第五章 権力闘争

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民主主義政治とは 【政治家の選び方】

日本は民主主義国家ですから、選挙で多数派に支持された政党が国の舵取りを行います。しかし、少数派になったからといって、その人達の意見が全く無視されるわけではありません。議会では与党と野党が議論を尽くしますから、過激な政策に対しては抑止力が働きます。

選挙には三つの結果があります。
1.参戦して、勝利する。(与党
2.参戦して、少数勢力になる。(野党
3.不戦敗、無条件降伏する。

このいずれかになります。このうち3を選んだ人、つまり投票しない人の立場は全く無視されてしまいます。

さらに投票率の低下が続くと、政治家は国民を無視しはじめます。どうせ国民は政治に関心がないのだから、浮動票には気をつかわなくても今ある固定票だけで選挙に勝てるだろう、と考えるようになります。しかし、投票率が高ければ、政治家は選挙に勝つために浮動票を獲得しなければならないので、国民の意見をよりよく聞くようになります。

しかしながら、政治家の選び方なんて知らない、誰からも教わってない、という方もいると思いますので、簡単なやり方を説明します。

◆政治家の選び方。
正しさは視点によって異なるということは以前に説明しました。つまり、すべての人々にとって“共通の正解の政治家”はいないということになります。なので自分の利益や価値観にかなった政策を主張する政治家を選びましょう。政治家の能力はその次に考えます。いくら能力が高くても自分の利に反した政治家を選んでしまうと意味がないので気をつけましょう。とくに優生思想を主張している人は避けましょう。独裁者になる可能性があります。

★自分の利益と価値観を発見する方法。
そのときの政治の争点になっているテーマについて書かれた本を読むのが良いでしょう。そのなかで自分はどの立場に立っているのかを意識すれば、どんな政策が理にかなっているのかがわかるでしょう。たとえば、Amazonで「談合」「ワーキングプア」「天下り」「年金」などのキーワードで検索すると、そのテーマに関連した本が表示されます。

・次に、具体的な選定に入ります。国政選挙の場合は、まず各政党のウェブサイトでマニフェストを読みましょう。そのなかで自分の利益や価値観と合致している政党を選びます。候補が複数ある場合は、いかに論理的に書かれているかを重視します。第一章第二章の原則にもとづいて詳しく納得のいくように書かれているかを見ましょう。

◇論理な主張の原則おさらい。
1.問題の提起。(結論を支える理由)
2.原因の分析・特定。(結論を支える理由2)
3.2の証拠。(理由を支える事実)
4.解決策。(結論)
5.4の根拠。(結論を支える根拠、と根拠を支える事実)
6.4の具体的な実行手段(実行計画、5W3Hを確認する)

支持政党が決まったら、自分の選挙区から投票できる政治家の公式サイトにアクセスして、そこに載っている論文が論理的に書かれているかを確かめましょう。資格・経歴・実績も確認しておきましょう。

あなたなら次の二人の政治家のうち、どちらに投票しますか?

【政治家A氏の主張】
「子育て支援制度をもっと充実するべきです! 国民が安心して子どもを育てられない国なんておかしい! 今の日本には、経済的な理由で出産をあきらめている家庭が多い! 私は、国民が安心して子育てできる環境づくりを国に訴えていきます!」

【政治家B氏の主張】
「子育て支援を充実するべきです。現在の子育て環境には○○という問題があります。その原因は△△です、その証拠に××という調査結果があります。これを解決するためには政策Aを実施する必要があります。その根拠は□□です。さらに政策Aの成功を裏付ける事例Bがあります。そして、政策Aの実行計画Cです。」

A氏の場合は、自分の頭の中身を見て話しているので、具体的な中身が読み手に伝わりません。すると聞き手も、「本当にこの人は具体的な根拠もって計画を考えているのだろうか?」と疑います。もちろん、本当に政策に欠陥がある可能性もありますから、A氏のような政治家は避けるべきです。しかし、利害・価値観が一致する政治家がA氏しかいない、というのであれば仕方ありませんが。

一方、B氏の例文は(大雑把に作りましたが)、根拠をあげて説明しており、費用の試算などもしているので、論理的な構造をしていると言えます。読み手が疑問に思う点をあらかじめ盛り込んでいるので親切な主張の形です。

政治家には、政策の中身そのものだけではなく、"政策を説明する能力"も必要になります。有権者を説得するさいも、議会で意見の異なる議員を説得するさいも、論理的に説明する必要があります。

ただし、日本は他の先進国に比べて行政の透明化が遅れており、予算の情報を官庁(官僚)が握っているために、5W3Hの実行計画を立てることが特に野党の側からは困難であることを頭に入れておく必要があります。余談ですが、海外では行政の透明化が進んでおり、市民団体ですら資料を引き出せる制度になっています。行政の透明化は民度の高い民主主義には欠かせません。

参考記事: 第一章 論理的な主張の仕方 論理的な思考法1 【正しさ(善悪)は視点(前提)よって変化する】

行動でだけでは必ずしも幸福にはなれないが、
行動のないところに幸福はありえない。

ディズレーリ/イギリスの政治家


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目次
■ 権力闘争 【決定権者は誰?】
◇ インセンティブ 【賞で相手をコントロールする】
◇ インセンティブ 【罰で相手をコントロールする】
◇ インセンティブ 【罰で相手をコントロールする その2】
◇ 権力闘争 【分断して統治せよ】
◇ 民主主義政治とは 【政治家の選び方】
◇ 権力闘争 【本音と建前】


本章で解説するインセンティブについては、梶井厚志氏の『戦略的思考の技術―ゲーム理論を実践する』にも記載されています。

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