序章 論理的思考のメリット

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◇ 三段階の議論力。

これはあくまでも私個人の見解ですが、議論における合理的な思考力には次の3つの段階があると考えています。

第一段階: 非論理的な思考力の段階。
第二段階: 論理的だが、無菌室の論理(*1)にこだわっている段階。
第三段階: 論理的かつ、相手との利害関係、力関係、感情も計算できる段階。

1つずつ説明すると、

【第一段階の人は】
・誤った情報を識別できない。
・上記ゆえ、マインドコントロールにかかりやすい。
・上記ゆえ、第三段階の人に騙されたり、利用されたりすることが多い。
・主張に説得力がないので、他者の協力を得られにくい。
・反論が苦手なので、いつも都合の悪いことを押し付けられる。

【第二段階の人は】
・利害の一致する相手なら説得することができる。
・他人がみな対等な条件で議論に付き合ってくれると信じているので、自分よりも権力の強い相手に議論を挑み、論理とは別のところで圧力をかけられて潰されることがある。
・正論を言っていても相手の面子を潰してしまい協力を得られないことがある。

【第三段階の人は】
・パワーバランスを把握できているので、強力な相手に無謀な戦いを挑むことがない。
・いざ戦うときも、常に自分の立場が有利になるように用意周到に準備して立ち回ることができる。
・交渉をするときは、お互いの利益になる方向へ利害を調整できるので協力を得られやすい。
・相手の面子を潰さないように配慮するので協力を得られやすい。
・相手がまだ論理が理解できない子どもでも、感情を読んで協力させることができる。

当サイトの目的は、いま第一段階にいる人が、第三段階にレベルアップするために必要な情報を提供することです。


次に、第一段階の人の主張によく見られる特徴を挙げてみます。

1.結論だけを述べて、根拠を述べない。
2.自分の考えに自信が持てないので、言葉からも自信がなくなる。「思います」 「気がします」 「かもしれない」という言葉を多用するようになる。
3.相手の人格を攻撃すれば議論に勝てると思っている。
4.自分の意見が批判されると、人格まで傷つけられたように感じて、平常心を失い、怒ったり、引っ込んだり、間違いを素直に認めることができなかったりする。
5.反論をしているつもりなのに論点がずれていたり、無自覚に詭弁を多様する傾向がある。
6.鋭い反論を受けても、自分の主張のどの部分が非論理的だったり根拠が欠けていたりするのかが解らないので、依然として自信に満ち溢れている。

2に関してですが、これから「思います」 「気がします」 「かもしれない」という言葉を使う人を、注意深く観察してみてください。根拠を述べていない人が多いはずです。根拠がないので自信が持てず、その結果、結論を表現する言葉が曖昧になってしまうのです。なぜなら、結論を明言してしまうと根拠も一緒に述べなければ不自然に見えてしまうためです。したがって、根拠を述べる責任を追及されないように結論を曖昧にしておくのです。(第一章で詳述します) 念のために書いておきますが、これらの言葉を使うこと自体が悪いわけではなく、根拠を述べないと主張の論理性が弱まるという意味で書いています。

3に関してですが、人格を攻撃するのは「対人論証」という詭弁です。(第三章で詳述します)

4に関してですが、意見と人格は全く別のものなので傷つく必要はないのです。(第二章で詳述します)

5に関してですが、論点が外れてしまうと本人は意図していなくても「論点相違」という詭弁になってしまいます。(第二章で詳述します)

あなたが該当していても落ち込まないでください。論理的思考力は生まれたときから身についているものではありません。勉強と訓練で身につけるものです。このサイトは第一段階の人のために作成しているので、続きを読んでいただければわりと簡単に次の段階へと進めるはずです。


【テレビの討論番組に出ていた第一段階の出演者】

以前テレビの法律番組で、ゲストのタレントがある訴訟に関して意見を求められたところ、「法律とは関係ないけど、こういう人(原告のこと)はどうせ何をやってもダメだと思う。」と言っていました。これはまぎれもなく人格攻撃です。

この質問に対して、「法律とは関係ないけど」と答えるのは、「私は論点に沿った発言ができません」と宣言しているのと同じです。発言を言い換えると、「論点は外れますけど、印象だけで言えば、原告の人格は劣っていますね」。

情報バラエティ番組ではこういうレベルの議論が放送されており、間違いを指摘できる論客も議論を交通整理する議長も出演していません。番組には論理教育が疎かにされてきた日本のレベルが反映されていると思うのです。もし視聴者の論理能力が高ければこの番組は視聴率をとれないでしょう。

さて、第二段階の人の特徴にも少し触れておきましょう。第二段階の人はよく「法律(規則)で決まってることだから正しい!」といった主張をしがちです。しかしながらその規則は相手にとって得なのか損なのか? 規則を執行する力は用意してあるのか? といったところまでは考えが及んでいないことがあるようです。

【当サイトの立ち上げ理由】

私は日本が論理教育を疎かにしてきたことを常日頃から不満に思っていました。テレビの議論でもネットの議論でも詭弁と強弁の応酬で議論が平行線をたどるところばかり見てきました。みなさんもそうだと思います。

日本は民主国家なのに国民がまともな議論を交わせないというのはおかしいのではないか? このあたりで一度、論理思考と議論の技術を網羅した教材を全世帯に無料配布すべきではないのか?

しかし政府がそんな気の利いたことをするとも思えません。それなら誰かが教科書を作ってネットで無料公開すればいいんじゃないか? ところが、議論を扱ったサイトはいくつかあるものの、私が想像しているものとは趣旨が異なっていたり専門的過ぎたりしたので、「それならもう自分で体系だった教科書を作ってしまえ」ということで、色々な人の力を借りて勉強をしながらこのサイトを立ち上げました。

これで議論やメディアリテラシーに応用できる論理思考の技術をすべての国民が無料で学習するための教材が完成しました。

しかしながら、知名度がなければ学習の機会が充分満たされたとは言えません。もし当サイトの理念に共感して頂ける方がおりましたら、できる範囲で協力していただけると幸いです。例えばリンクを張っていただけるだけでも大変助かります。よろしくお願いいたします。

それから、当サイト内の、私が書いた文章の引用・改変・複製・再配布・商用利用に関してはすべて自由としております。

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目次
◇ 考えを表現する能力は、考えの中身そのものと同じくらいに重要
◇ 「小説」の書き方と、「論じる文章」の書き方は異なる
◇ 文学中心の国語教育とはどういったものか?
◇ 論理的な会話の例
◇ 三段階の議論力
◇ 論理的思考のメリット
◇ よく見る掲示板荒らしについての考察


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