序章 論理的思考のメリット

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◇ 論理的思考のメリット。

論理的思考のメリットを5つに分けて紹介します。

1.他人を説得するため。


論理的に思考したり話したりするのが苦手な人は、自分の言いたいことをうまく言語化できないので、他人に伝えたいことをうまく伝えられず、共感や協力を得られないことがあります。ある思考を自分では正しいと信じていても、筋道を立てて説明できなければ他人を説得することはできません。

「論理的に思考する」ということは、物事を理詰めで考えるということで、「理詰めで考える」ということは、理屈によってのみ思考するということです。

例えば、「道徳的に正しい意見には根拠は不要だ」と思っている人がいますが、道徳にも根拠はあります。道徳ではルールを守ったり助け合ったりすることが推奨されますが、これは人間の祖先が群れを形成して個の生存と種の保存を有利に運んできたことと関係があります。群れの人間関係や連携を円滑にするために道徳が生まれたのです。

こう表現するとまるで「感情を排除せよ」と言っているように聞こえるかもしれませんが、そんなことはありません。なぜなら、道徳の根底には感情があるからです。道徳によって群れが円滑に機能しなければ個体の死や種の絶滅の危機に襲われる確率が高まります。生物にとって死や絶滅は「不快」(不利益)なこととしてインプットされており、生存や種の保存は「快適」(利益)なこととしてインプットされています。そして、生物は「不快」なことを回避して「快適」さを追求するようにできているのです。

このように、人間にかかわる議論の根底には「快・不快」 (利益・不利益)の感情があるのです。つまり、道徳的に行動することによって、何か「不快」(不利益)な出来事を回避したり、「快適」(利益)を得られることが起きるはずなのです。その目的と根拠を論理的に説明すれば他人の共感や協力を得ることができるのです。

【まとめ】
論理的な思考で話すことができれば、普段はなんとなく"思っているだけのこと"を、しっかりとした目的と根拠にもとづく論理的な"意見"に昇華させることができる。なおかつ、"わかりやすい表現"で他人に伝えることができる。

この技術について学習したい方には、第一章−論理的な主張の仕方から読むことをお薦めします。

また、論理的に話せるけど相手とけんかになってしまう方には、第六章−トマスゴードン博士の親業訓練講座(P.E.T.)をお薦めします。これはカウンセリングの技術を応用して相手を怒らせずに説得するテクニックです。

2.納得できない意見に反論するため。


突然、他人から議論をふっかけられたり、腹の立つことを言われたことはありませんか? 絶対に相手のほうが間違ってると思うのに、相手の主張のどこがなぜおかしいのか論理的に指摘できなくて、結局いつも自分が悪者にされたりバカにされたりして悔しい思いをしていませんか?

そんな人生を終わりにしたい方には、第二章−論理的な反論の仕方をお薦めします。

3.偽の情報や誤った情報を判別するため。


情報の正確さを判定するツール(思考法)として役に立ちます。テレビ・ネット・書籍にはまともな検証がなされていない、いい加減な情報があふれています。情報の正確さを判定する能力が身についていないと誤った情報に惑わされるはめになります。論理的思考力はメディアの情報を鵜呑みにするのではなく、自分の中で一考する手助けとなります。

皆さんは、「発掘!あるある大辞典」を覚えていますか? この番組は、実際には効果のないダイエット法を紹介していました。騙されて悔しい思いをした方もいると思います。しかし一方で、情報の嘘を見抜いていた人々もいます。両者を分けたのは、"論理的思考力"で、その中でも特に"詭弁と統計に関する知識"の差が影響しています。

ある結論の正しさを証明するためには、きちんと正しい過程を踏んで論証(説明)する必要がありますが、論証に必要な要件が満たされていない場合、結論は疑わしいものになります。嘘や誤りを見抜くためには、論証の過程を見ればよいのです。

これらの知識を学びたい方には、第二章はもちろんのこと、第三章−詭弁・誤謬・レトリック第四章−統計の嘘の見抜き方をお薦めします。

4.政策や提案を評価するため。


民主国家の日本では、国民が政策を評価して投票をしなければなりません。

どの政策が自分に利益をもたらすかを判断するためには、論理的に分析する必要があります。国民は各々の立場の違いによって、同じ政策でも受ける利害が異なります。他人が素晴らしいと言っている政策があなたにとっては損失をもたらすものかもしれません。

また印象だけで投票してしまうと、とんでもない政治家を選んでしまう可能性があります。

例えば第二次大戦前、ドイツは世界恐慌の影響で経済が破綻しており、その混乱の中ドイツ国民はカリスマ性のある独裁者ヒトラーを選んでしまったのです。しかし、全ての国民がヒトラーを支持していたわけではありません。教養のあるドイツ人は決してヒトラーを支持しませんでした。

支配者は大衆をコントロールするために様々な権力や心理的なテクニックを駆使します。それは政治家だけに限らず、会社、学校、家庭における支配者も同様です。しかし権力の使い方を知ることにより免疫をつけることはできます。それついて知りたい方には、第五章−権力闘争をお薦めします。

5.感情に流されないため。


人間は論理的思考をしているつもりでも実は心理的バイアスや群集心理に影響されていることがあります。しかし知識を得ることにより免疫をつけて影響されにくくすることはできます。それについて学習したい方には第7章−思考を歪める心理効果をお薦めします。


日本人は「知る者」と「知らざる者」の二つにはっきり分けられている。
普通の人々には「もっともらしいウソ」だけが与えられ、
真実はエリートだけが知っている。
(カレル・ヴァン・ウォルフレン)

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目次
◇ 考えを表現する能力は、考えの中身そのものと同じくらいに重要
◇ 「小説」の書き方と、「論じる文章」の書き方は異なる
◇ 文学中心の国語教育とはどういったものか?
◇ 論理的な会話の例
◇ 三段階の議論力
◇ 論理的思考のメリット
◇ よく見る掲示板荒らしについての考察


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