第二章 論理的な反論の仕方

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●前提と結論のつながり 【逆と裏と対偶】

ここでは論理の欠陥を見抜くための基礎知識として、『逆』と『裏』と『対偶』を解説します。 

『AならばBである』に対して、
『BならばAである』を、「逆」と呼び、
『AでなければBでない』を、「裏」と呼び、
『BでなければAでない』を、「対偶」と呼びます。

『AならばBである』が真実であるとき、『対偶』は常に真実です。しかし『逆』と『裏』は真実であるとは限りません。これは、「A」を「女」に、「B」を「人間」に置き換えて考えてみれば分かりやすいでしょう。

『女ならば人間である』が真実のとき、
逆は、『人間ならば女である』ですが、これは真実ではありません。(男かもしれませんから)
裏は、『女でなければ人間でない』ですが、これも真実ではありません。(男も人間ですから)
対偶は、『人間でなければ女でない』です。これは真実です。

では、しっかりと理解するために次の問題を解いてください。

【問題1】 次の主張の逆・裏・対偶を答えてください。(答えは『』内をドラッグ)
『モーツァルトは天才である』
逆: 『天才ならモーツァルトである
裏: 『モーツァルトでなければ天才でない
対偶: 『天才でなければモーツァルトでない

『「七人の侍」は駄作ではない』
逆: 『駄作でないならば「七人の侍」である
裏: 『「七人の侍」でなければ駄作である
対偶: 『駄作ならば「七人の侍」でない

『論理的でないならば雄弁家である』
逆: 『雄弁家ならば論理的でない
裏: 『論理的ならば雄弁家でない
対偶: 『雄弁家でなければ論理的である

『コミュニケーションを学ぶ場でなければ学校ではない』
逆: 『学校でないならコミュニケーションを学ぶ場でない
裏: 『コミュニケーションを学ぶ場ならば学校である
対偶: 『学校はコミュニケーションを学ぶ場である

では、ここまでの知識をふまえて次の問題を解いてみてください。

【問題2】 次の主張の論理構造は正しいでしょうか? その理由は何ですか?
『あなたのお母様やお祖母様をよくご覧になりなさい。今日まで主婦として家庭を守ってきた者はみな女性なのです。夫を支え子を守り育てることが女性に与えられた大切な役割なのです。ですから、あなたも女性ならば家庭にお入りなさい。』

答え: (誤りです。 なぜなら、この主張は大前提として「『逆』は真実である」を含んでいるためです。この主張の論理構造は次のようになっています。
  前提1.主婦はみな女性である。
前提1ゆえ.女性はみな主婦である(べき)。...(結論)

この主張は、『主婦はみな女性である』という根拠から、『女性はみな主婦であるべき』(逆)という結論を導いています。しかし「逆」は真実とは限りませんから、前提1から結論を導くことはできません。したがって、この論理構造は誤りです。

読者の中には、「逆が真実とは限らないからといって、直ちに結論が否定されるわけではない(結論は正しいかもしれない)」と考える方もいらっしゃると思いますが、今は結論が正しいか否かではなく、論理構造(結論の支え方)が正しいか否かの説明をしています。つまり誤った支え方では結論の正しさを証明したことにはならないということです。

ちなみに、この問題文は『主婦はみな女性である。したがって、女性はみな主婦になるべきである』という主張と同じ意味の発言ですが、そのままだとあまりにも論理の弱点が見え透いているので、レトリックにより覆い隠しているのです。(実際にこの手法はよく使われます。)
)

では次は、前項で解説した演繹法と対偶を同時に使う問題を解いてみましょう。これはルイス・キャロルが作った問題で、小野田博一氏の『論理的に話す方法』からの引用です。(メモ帳を起動した方が良いでしょう。)

【問題】 次の前提から導き出せる結論は何ですか? (前提はすべて真実と仮定してください。)
     前提1.赤ちゃんは非論理的だ。
     前提2.ワニを操ることができる人は軽蔑されない。
     前提3.非論理的な人は軽蔑される。
 前提ゆえ.赤ちゃんは軽蔑される。)...(A)
(前提2)の対偶は.ワニを操ることができる人は軽蔑されない。)...(B)
 前提ゆえ.赤ちゃんはワニを操れない。)...(結論)

もしこの問題を解くことができたなら、あなたはすでに高い次元にいます。

★逆・裏・対偶を使った問題をもっと解きたい方のために問題集(外部サイト)へのリンクを張っておきます。
問題集1 問題集2 問題集3

「なぜ美人はいつもつまらぬ男と結婚するんだろう?」
「賢い男が美人と結婚しないからさ」

「呪われた男」より


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目次
●はじめに 【クリティカル・シンキング(批判的思考)とは】
■反論のための基礎知識。
●前提と結論のつながり 【演繹法(えんえきほう)】
●前提と結論のつながり 【帰納法(きのうほう)】
●前提と結論のつながり 【逆と裏と対偶】
●前提と結論のつながり 【必要条件と十分条件】
●前提と結論のつながり 【論理の欠陥あれこれ】
●前提と結論のつながり 【隠れた前提には5つの種類がある】
●前提と結論のつながり 【隠れた前提の一種 「言葉の定義」】
■質問と反論の仕方。
●反論の原則 【前提(根拠)を攻撃せよ】
●質問と反論の技術 【個々の前提に反論せよ】
●質問の技術 【「なぜ?」の習慣 批判的思考】
●質問の技術 【抽象的な意見を具体化させてあげる】
■間違った反論の仕方。
●反論の禁じ手 【論点に沿った反論をせよ (論点のすり替え)】
●反論の禁じ手 【相手の主張を歪めてはならない (ダミー論証)】
■精神論。
●精神論 【結論に賛成だと批判的思考力が麻痺する (論理飛躍)】
●精神論 【本当にこの説明で相手が理解できるだろうか?】
●精神論 【自分の間違いは認めたくない (認知的不協和)】
●精神論 【意見と人格は切り離して考えよう】
●精神論 【相手の感情に配慮しよう】
■練習法。
●練習法 【クリティカル・シンキングの訓練法】


論理的な反論の仕方についてさらに深く学習したい方には、小野田博一氏の『論理的に話す方法』をお薦めします。論理の欠陥を見つける手法が、やさしい文章で詳しく解説されています。

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