論理的思考力と論理的な議論




当サイトが最も参考にさせて頂いている
小野田博一先生の新刊が出版されます!
『話す・聞く・考える 「論理力の基本」トレーニングブック』
7月31日発売。予約受付中!


【論理的思考力と議論】

【上級者の実戦を観察する】

【心理と対話】

【その他】



第二章 論理的な反論の仕方―サブメニュー

【論理的思考法の基礎知識】

【前提の正しさを疑う反論】(論証型の反論)

【新たな前提を加える反論】(主張型の反論) 

【推論の形式(前提と結論のつながり方)を疑う反論】

【メンタルの管理】 


論理の飛躍

最終更新日:2016.1.6

論理の飛躍

この記事は、読者が「逆・裏・対偶」を読んでいる前提で書いています。
文章中に「AはB」という表現がある場合、「すべてのAはBである」という意味です。


逆は必ずしも真ならず!
後件肯定の虚偽!!


「AはB。したがってBはA!」

これは「AはB」の意味を「AのみがBである」と誤解しているケースです。
具体例を示しましょう。Aを「女」に、Bを「人間」に置き換えてみるとわかります。

「女は人間である。したがって人間であるなら女であると言える」

女のみが人間であるとは限りません。男も人間です。
逆・裏・対偶」を理解していれば自然に理解できるはずです。

「カラスは鳥である。したがってすべての鳥はカラスである」

ハト、スズメ、ツバメ、フクロウなどの反例があるので矛盾です。

むかしびと 「人は対象についてよく知らないときに恐怖を感じる。すなわち、あらゆる恐怖の原因は無知にある。だから、知恵があれば怖いものなど無い」

お前が矛盾を認めるまで、お前の爪にこうやって一本ずつ鉄串を刺していくと激痛が走ることを、お前は知っているな・・・・・・。お、反例あったね。矛盾です。

いい人 「成功した人はみんな苦労していた。だから苦労した人にはその後必ず良いことがあるんだよ」

起業して数千万円の借金を負って自殺した者もいる。リストラに遭い、残りの生涯をホームレスとして過ごす者もいる。

熱血マン 「夢を叶えた人はみんな諦めなかった。だから諦めなければ夢は叶う!」


いい人 「愛に飢えれば犯罪者になる。つまり犯罪者になる人は愛情に飢えてたんだよ」


共和党マン 「民主党は国民皆保険制度を導入しようとしている!でも共産主義にも国民皆保険制度がある!だから国民皆保険制度は共産主義だ!」


次は反論が変な例

動物好きマン 「頭の良い動物を殺してはいけない」
動物嫌いマン 「じゃあ殺しちゃいけない動物はみんな頭いいんだな?(A) ペットは殺せないけど頭悪いのもいるだろ!はい論破!」

Aの解釈が飛躍なのでその後の反論が的外れです。


人格批判のエースだ!
媒概念不周延の虚偽!!
(ばいがいねんふしゅうえんのきょぎ)

「AはC。BはC。ゆえにAはB」

これは、「AはC」を「AのみがC」と誤解しているケースです。

「女は人。男は人。ゆえに女は男だ!」

女のみが人であるとは限りません。男という反例が存在するので矛盾します。

「犬は動物。猫は動物。ゆえに犬は猫だ!」

犬のみが動物であるとは限りません。猫という反例が存在するので矛盾します。

自己顕示マン 「頭の良い人は本をよく読む。私もまた本をよく読む。だから私は頭が良い」

これも前の例と同じ理屈で、すべての「本をよく読む人」が必ずしも頭の良い人であるとは限りません。良書を選んでいるか、書かれていることを理解しているか、理解したことを応用できているか。越えるべきハードルはまだありそうです。

精神医学かじり虫 「発達障害者は他人の気持ちがわからない。見たところ、ネトウヨも他人の気持ちがわからないようだ。きっと、ネトウヨは発達障害者なのだろう」

これも、すべての「他人の気持ちがわからない者」が必ずしも発達障害者であるとは限りません。

フリーメーソン 「統合失調症の患者には集団ストーカーの被害を訴えるという特徴がある。あなたもまた集団ストーカーの被害を訴えている。だから、あなたは統合失調症です」

これも、「集団ストーカーの被害を訴えている人」のすべてが、ただちに統合失調症であるとは断定できません。

モテモテ王国 「モテない奴はプライドを守るために『恋愛には価値がない』と言う。お前も『恋愛には価値がない』と言っている。つまりお前はモテないだけなんだよ!」

確かにそういう人もいるでしょう。しかし、他に原因がある可能性を排除できていません。

認定マン 「サイコパスは婚姻期間が短い。お前もすぐに離婚したな。つまりお前はサイコパスなんだよ!」

仮にサイコパスだから婚姻期間が短い人がいるとしましょう。しかし、婚姻期間が短い原因が他にもある可能性を否定できていません。

根性マン 「甘やかされた奴は他人のせいにする。お前も他人のせいにしている。つまりお前は甘やかされてんだよ!」

まずどういう基準で自己の責任の範囲を線引きするべきなのかが説明されていません。もしかしたら根性マンは責任の基準について、よく考えないまま発言しているかもしれません。

心理学かじり虫 「認知バイアスがかかってる奴は間違いを認めない。お前も間違いを認めない。つまりお前の思考には認知バイアスがかかってるんだよ!」

これも媒概念不周延の虚偽です。

話聞かないマン 「図星を突かれた奴はムキになって反論する。お前はムキになって反論している。つまりお前は図星を突かれている」

図星は突かれていないけれど濡れ衣を着せられている者は、怒って反論するのが自然でしょう。


裏は必ずしも真ならず!
前件否定の虚偽!!


『AはB。AでないからBではない』

「AはB」を「AのみがB」と誤解しているケースです。
Aを「女」に、Bを「人間」に置き換えるとわかります。

『女は人間である。女でないから人間ではない』

女のみが人間とは限りません。なんだ裏のやつか

いい人 「愛に飢えれば犯罪者になる。つまり愛情をかければ犯罪者にならない」


次のは反論がおかしい例です。

名前なし夫 「反論される覚悟がないならウソをつくな」
名前なし子 「反論される覚悟があるならウソをついてもいいんだな?(A) なわけねーだろ、はい論破!」

Aの解釈が飛躍なのでその後の反論が的外れです。

熱血教師マン 「反撃される覚悟が無いならイジメなんてやるな」
ヤンキーマン 「なら俺は反撃される覚悟あるからイジメるよ、いいんだよな?」


動物好きマン 「頭の良い動物を殺してはいけない」
動物嫌いマン 「頭悪い動物なら殺していいのか? それだとお前も殺していいことになるんだけどそれは」

嫌いマンの解釈が飛躍です。


反例なんか忘れたぜ!
不当大名辞!!


『BはC、AはBでない。したがってAはCでない!』

「BはC」を「BのみがCである」と誤解しているケースです。
Bを「女」に、Cを「人間」に、Aを「男」に置き換えればわかります。

『女は人間、男は女ではない。したがって男は人間ではない』

女のみが人間とは限りません。

??? 「動物に冷たい者は人間にも冷たい。シーシェパードは動物に優しい。したがってシーシェパードは人間にも優しい」


将来予想するマン 「愛情をかけられた者は犯罪者にならない。お前は愛情をかけられなかった。ゆえにお前は犯罪者になる」


優越マン 「論理思考ができるならバカでない。お前は論理思考ができない。よってお前はバカだ」



即関連付けるぜ!
不当小名辞!!


『AはBかつCである。したがってBはCである!』

これは「AはB」を「AのみがB」と誤解しているケースです。
Aを「太郎」、Bを「男」、Cを「日本人」に置き換えるとわかります。

「太郎は男かつ日本人である。ということは男はみんな日本人だ」

そうか!

「塾は勉強をする所だ、そして授業料も必要だ。したがって勉強をするためには授業料が必要だ」

なんと皆さん、当サイトは無料であります!

「暴力は悪である。また力でもある。ゆえに力は悪である」

共感力とか警察力とか学力とか何か反例ありそう。

ぎゅうにゅうきらいマン 「北欧人は骨折率が高い、それに牛乳をよく飲む。したがって牛乳をよく飲む人は骨折率が高い」

道凍ってんじゃねえの。

父さんマン 「北欧諸国は人口の割にノーベル賞受賞者が多い。それに魚をよく食べる。だから頭の良い人は魚をよく食べるんだぞ。知ってたか!?」

ちげーよ骨折すればいんだよ。


数が増えたぜ!
4個概念の虚偽!!


「AはBかつCである。DはBである。したがってDはCである」

わかりやすい例↓

「女は人間であり、かつ出産できる。男は人間である。したがって男は出産できる」







タバコ吸うマン 「ヒトラーは独裁者であり禁煙論者でもあった。だから禁煙論者は独裁者である。ところで、お前は禁煙論者だから独裁者だな」

禁煙論者を色んなものに変えると誰でも独裁者になれるぞ、やってみよう!

死体食愛好家 「ヒトラーは独裁者でありベジタリアンでもあった。やはりベジタリアンには独裁者の素因がある。ところで、こいつもベジタリアンだな。お前ら、こいつの思想はベジファシズムだから騙されるなよ!」

ファシズム=独裁主義

ジャスティスフェミニスト 「人身売買は人間の品評会であり、かつ人権侵害である。美人コンテストも人間の品評会である。したがって美人コンテストは人権侵害である」



いつから一方のみだと錯覚
していた? 選言肯定!!


『AまたはBである。ところでAだからBではない』

これは「AもBも正しい可能性がある」を「常にAかBの一方のみが正しい」と錯覚しているケースです。

「人間は肉または魚を食べる。ところで肉を食べるから魚は食べない」

普通はどっちも食べる。

「アメリカには白人または黒人がいる。ところで白人がいるから黒人はいない」

どっちもいる。


「『自演乙』はオタクかスポーツマンである。『自演乙』はオタクである。ゆえに『自演乙』はスポーツマンではない」

隠れた前提 「オタクがスポーツマンのわけない」
スポーツマンでオタクでもいいじゃん。

白鳥カトリーヌ 『なぜお父様はわたくしに門限を強制なさるのでしょう?』
セバスチャン 『強制ではございません。旦那様はただお嬢様の心配をなさっているだけでございます』

隠れた前提 「心配しているならば強制はしていない」
心配で強制してるのかもしれない。

しゃべり場マン 「困ってる人を助ける人は賞賛されたいだけだ。本心から同情していない」

隠れた前提 「賞賛されたがる人は同情していない」
本当だろうか、本心から同情していて賞賛もされたいのかもしれない。

ジャスティスマッチョ 「社会保障を叫んでる奴らはもうそろそろ諦めて努力しろよ」

隠れた前提 「政治的主張と自助努力は同時にはできない」
決め付けは良くない、良くないよ。

A「犯罪が多いのはなぜだ!?」
B「警官が少ないからだ!」
C「違う、失業率が高いからだ!」
D「そうじゃない!道徳教育が不十分だったからだ!」

犯人によって原因が違うかもしれない。また全ての原因が合わさって犯罪につながったのかもしれない。


途中で定義変えやがった!
媒概念曖昧の虚偽!!


「お前は政府の犬だな、
ところで犬は嗅覚が鋭い。
だからお前もさぞや嗅覚が鋭いんだろうな」


一段目の犬は忠誠心が強いというニュアンスの比喩、二段目は実際の犬を指しているので定義が変わっています。

さらに二段目の嗅覚は本来の意味。三段目の嗅覚は不正を嗅ぎ分ける力をたとえています。短い文章の中でも定義を変えられるので注意しましょう。

「狼には毛皮がある、
男は狼である、
ゆえに男には毛皮がある」

狼の定義が変わってる。

「あの女は泥棒猫だ、
猫には牙がある、
ゆえにあの女にも牙がある」

猫の定義が変わってる。

実際の有名なやつ

非戦闘地域では戦闘がおきていない。
自衛隊の行く場所は非戦闘地域だ。
だから自衛隊の行く場所では戦闘がおきていない」

一段目は実際的な非戦闘地域で、二段目は法律上の非戦闘地域だということらしいよなんか。

「法律では殺人を禁止していながら、一方で死刑という殺人を犯すのは矛盾している」

前半の“殺人”の定義は「法律上の解釈で違法とされる人殺し(戦争、妊娠中絶、正当防衛、死刑を除く人殺し)」を指していて、後半の“殺人”の定義は「人を殺す行為すべて」を指しています。

A氏 「私は○○(特定の思想)を支持します」
B氏 「○○を支持する奴は本当の日本人じゃない」
A氏 「では日本人でなくて結構です」
B氏 「じゃあ今すぐ日本から出て行け!!」

2行目の「日本人」は価値観のうえでの日本人を指していますが、4行目では法律上の日本国籍を指しています。

前の定義で統一するなら4行目は「私の価値観のうえで日本人として認められない者は日本から出て行け」となり、後の定義で統一するなら2行目は「○○を支持する者は日本国籍を持たない」となるのでムチャクチャです。


「あるAはBである」、
ゆえに「BでないならAではない」

「あるAはB」と「すべてのAはB」は扱いが違います。「あるAはB」の対偶は「BでないならAではない」にはなりません。

例 「ある人間は男である。ゆえに男でないなら人間ではない」
こうはなりません。

同様に
「私の知人のある女は非論理的だ。ゆえに非論理的でない女はいない」
この推論形式は正しくありません。



※ここまでの注意点
なお論理飛躍を起こしていてもたまたま結論が正しい事もあるので、論理飛躍を指摘しただけでは直ちに結論を反証したことにはなりません。ただ相手が立証できていないだけです。


みんな!オラにちっとつ元気を分けてくれ!Tweet

関連サイト
NHK高校講座 ロンリのちから 第1回 三段論法(動画)
NHK高校講座 ロンリのちから 第2回 誤った前提・危険な飛躍(動画)
誤謬 - Wikipedia(形式的誤謬の例)
Wikipedia - 詭弁 - 前件否定の虚偽
前件否定 - Wikipedia
Wikipedia - 詭弁 - 後件肯定の虚偽
後件肯定 - Wikipedia
Wikipedia - 詭弁 - 媒概念不周延の虚偽
選言肯定 - Wikipedia
Wikipedia - 詭弁 - 媒概念曖昧の虚偽
誤った二分法 - Wikipedia
詭弁術の考察―短絡的な思考



第二章 論理的な反論の仕方―サブメニュー

【論理的思考法の基礎知識】

【前提の正しさを疑う反論】(論証型の反論)

【新たな前提を加える反論】(主張型の反論) 

【推論の形式(前提と結論のつながり方)を疑う反論】

【メンタルの管理】 



※ブックマーク登録よろしくお願いします!
トップページ→論理的思考力と議論

inserted by FC2 system