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酸っぱい葡萄と甘いレモン【認知的不協和】

最終更新日:2016.1.3

今日は
・認知的不協和 (にんちてきふきょうわ)
・酸っぱい葡萄 (すっぱいぶどう)
・甘いレモン (あまいれもん)
これをやるぜ!


認知的不協和

人は自分の信念や、それまでの行動内容とは矛盾する、"新しい事実"を突きつけられると、"不快な感情"を引き起こします。その結果、自分の信念や行動と、"新しい事実"のどちらか一方を否定して、矛盾を解消しようとします。これを認知的不協和と呼びます。そのとき、信念を変えることが困難な場合、人は"新しい事実"の方を否定しようとします。

代表的な例がタバコで、タバコを吸うという行為に対して「タバコを吸うと肺がんになりやすい」という"新しい事実"が提示されます。すると、行動と事実の矛盾に対する不快感が起こり、タバコをやめるか、事実を否定することで矛盾を解消しようとします。しかしタバコには依存性があり、やめるのは困難です。したがって、事実の方を否定して矛盾を解消しようとします。

そこで、「タバコを吸っていても長寿の人もいる」とか「肺がんよりも交通事故で死亡する確率の方が高い」といった理屈を考えます。しかし認知的不協和の状態にある人はその時点ですでに結論ありきで考えているので、論理的に考えていない可能性があります。つまり頑固になっている状態といえます。

注意:喫煙を肯定する人がすべて認知的不協和におちいっていると断定しているのではありません。認知的不協和が原因の可能性があるというだけです。

不快感の強さは信念の強さに比例する。
より長きに渡って築き上げてきた信念ほど、否定さたときには強烈な不快感を伴ないます、自分の生きてきた人生をも同時に否定されたかのように感じるためです。

あるテレビ番組で行われた、第二次世界大戦で日本兵だった老人と若者の議論。

老人「戦争は悲惨なことだから二度と繰り返してはいけない」
若者「ではあなたが戦争へ行ったのは間違っていたのですか?」
老人「それは正しかった」
若者「でも戦争は間違ってたんですよね?」
老人「そうだ、戦争を繰り返してはいけない」
若者「じゃあ戦争へ行ったのは間違ってたんじゃないんですか?」
老人「だから!戦争は悲惨なことだから二度と繰り返してはいけないんだ!でも戦争へ行ったのは正しかった!」


可能性の話ですが、きっとこの老人は理性では戦争を繰り返してはいけないと考えつつも、感情では自尊心を守ろうとしていたのではないかと思います。

過去は変更できませんから、過去の行動を否定されると、"新しい事実"の方を批判したくなります。もしも"新しい事実"を認めてしまえば、それまでの生き方さえ否定されたように感じるはずだからです。

認知的不協和のせいでカルト集団から抜けられなくなる事もあります。認知的不協和・・・世界を理解するためのキーワード - David Icke in Japanより要約して引用。

自分が「常日頃信じていること」や「世界に抱いている理解」が目の前の事実や新たに提示される一般化された情報によって「脅かされた」時、その人々の心の中で起きる不快な気分、「もう聞きたくないから黙れ!」と思わず叫びたくなるこの「不協和」と「ストレス」を取り除くために普通の人は、

(1)それ以上調べることはやめて、矛盾する情報は間違っていることにして払いのけるか、

(2)行動や信念を別の方法で正当化することになる。

この認知的不協和による精神的葛藤を経験した時、人々はこの葛藤の解決として「思考様式が行動と合致する方向に徐々に修正されていく」(自己正当化)。

1954年にフェスティンガーと二人の同僚が、あるグループ(カルト集団と呼ばれていた)に潜入した後に起きたことである。このグループは、シカゴのマリオン・キーチという女性を信奉していた。彼女は「宇宙人」と接触していたと言われており、宇宙人は、1954年12月21日の夜明け前に大洪水が発生して世界は終末を迎えると彼女に伝えたという。

彼女を信じる人々は、大惨事が起きる予定の数時間前である12月20日の深夜に宇宙船が救出に来てくれることを信じ、仕事や学校を辞めて、家族を離れ、お金も財産も寄付した。

フェスティンガーと二人の同僚は、洪水と宇宙船が実現しなければ、認知的不協和の絶好の事例になると考えて、そのグループに潜入したのである。そして、実際にその通りとなり、その経験と発見を1956年のWhen Prophecy Fails: A Social and Psychological Study of A Modern Group that Predicted the Destruction of the World.[邦訳『予言がはずれるとき―この世の破滅を予知した現代のある集団を解明する』勁草書房(1995/12)]という本に詳細に記した。

12月21日、いつも通りに夜が明けたとき、グループを去ったメンバーもいたが、なんとも奇怪なことに、預言が実現しなかったという極めて明白な事実にもかかわらず、ほとんどのメンバーはそのまま留まり、以前よりも熱心な信者になった。

宇宙人も洪水も現れなかったことにより、宇宙人と洪水を信じていた思考は、両方とも発生しなかったという事実と激しく感情的に衝突したため、不愉快で重苦しい認知的不協和(認識の不一致)をもたらした。

この内的な不調和は、騙されたことを認める(ことにより信念と経験を統合する)か、もともと信じていたことを維持できるように事実を説明する方法を見つけるか、のいずれかによって解決されることになる。最初の道を選んだものもいたが、大半は後者を選択した。

大半の人々は、その夜、彼らの小さなグループが光明を流布したことにより、神が世界を破滅から救ってくれたので洪水は起きなかったのだと言うことにより、信念と行動との関係を再構築した。

私はこれと似た多くのグループやニューエイジの異端の信仰システムから同じようなことを何度も聞いたことがある。


続き...

レオン・フェスティンガーは、以下のような場合には、相反する明らかな証拠や経験をしたとしても、信念は維持されるものであるという。

1.強い信念であり、その信念がその人の行動に影響を与えてきた。

2.その信念に基づいて、取り返しのつかないような行動が取られた(財産を全て放棄し、家族との絆も断ち切るというような)。一般的に言えば、取った行動が極端であるほど、その行動を促した信念にしがみつくことになる。

3.その信念が間違っていることを本人に示す明白で取り消せない証拠が発生する。これは信念と体験の間に認知的不協和を生み出す。

4.個人としては信念と体験の矛盾があまりにも明らかであり、言い逃れできない状態にある。そのような境遇の人が他にもいることにより、お互いの自己欺瞞を助長するので、どのような体験をしたとしても、信念は維持されることになる。

When Prophecy Fails(予言がはずれるとき)』にはこう書いてある。

「信念を維持するには組織的な支えが必要である。孤立した信者が、我々が言及したような矛盾した証拠に耐え抜くことはあまりない。お互いに支えあうことができるグループの中で確信している場合には、信念は維持されるものと考えられる。そして、信者たちは、その信念が正しいものとして、組織外の人々を説得し、改宗させようとする」

これが群集心理の仕組みであり、「合意形成」と呼ばれるような、個人を集団の信念に従わせる圧力である。そして、皆の意見に疑問を持ち変わろうとする人が標的にされ、無視され、または、消される(タビストックの得意技だ)理由でもある。集団的な思い込みのシャボン玉に穴を開け、人々に矛盾を気付かせることで認知的不協和を煽る可能性があるそのような人々は「危険人物」である。

認知的不協和の発生に対してこのような精神的/感情的な再調整が常に働くことが、あらゆる宗教、政治、社会的信条の存続を確かなものにしている。旧来の信念を解体するようなものに遭遇しても、人々は信念が無傷で残るような矛盾を説明する方法を見つけるだけである。


さらに続く...

国を守り、国の利益になると思って軍人として戦争などに全生涯を捧げた人がいるとしよう。彼は自分のことを、家族や国や、そして世界のために良いことをしてきた良い人間だと認識している。いわばヒーローである。

あるとき突然、彼は自分が全く理解していなかった唯のゲームの駒であったと訴えるべき証拠に直面する。時々、自己犠牲をはらってなした彼のすべての努力は、実は、彼が守ろうとしていた人々を収監してコントロールするためのアジェンダ(計画)を推進することに利用されていたのである。


認知的不協和こわい。


認知的不協和には「酸っぱい葡萄」と「甘いレモン」という分類があります。

酸っぱい葡萄

「Aが手に入らないからAには価値が無い」

「Aができない」という自力で変えられない状況下で、「むしろAしないほうが良いのだ」と現状を正当化する方向に解釈することにより、精神的な負担を軽くする心理現象。

キツネが、たわわに実ったおいしそうなブドウを見つける。食べようとして跳び上がるが、ぶどうはみな高い所にあり、届かない。何度跳んでも届かず、キツネは怒りと悔しさで、「どうせこんなブドウは、すっぱくてまずいだろう。誰が食べてやるものか」と捨て台詞を残して去る。

多くのキツネが諦めたところに一匹のキツネが来てぶどうを手に入れる。すると周りのキツネは「あんなまずいブドウをとるやつはけしからん!」と言い放つ。


酸っぱい葡萄かもしれない
・ダイエットできない→むしろ食べたいもの食べて早死にしたほうが幸せ
・結婚できない→むしろ結婚にはメリットがない。
・お金がない→むしろ資本主義が世の中を悪くしてる。
・働けない→むしろ働いたら負け。
・モテない→むしろ二次元の嫁。



甘いレモン

「Aしか手に入らないからAには価値がある」

「Aをやめられない」という逃げられない状況下で、「むしろAをしたほうが良いのだ」と現状を正当化する方向に解釈することにより、精神的な負担を軽くする心理現象。

フェスティンガーの実験(Wikipediaより引用)

上記の煙草の例は、対照実験をすることが難しいため、認知的不協和の提唱者フェスティンガーは以下の実験を考案した。フェスティンガーは、単調な作業を行わせた学生に対して報酬を支払い、次に同じ作業をする学生にその作業の楽しさを伝えさせる実験を行った。

この実験では、実際にはつまらない作業という認知と矛盾する楽しさを伝えるという認知から不協和が発生するが、報酬の多寡で楽しさを伝える度合いが異なる事を確かめた。

報酬が少ない学生は、報酬が多い学生よりも楽しさを伝える度合いが強く、割に合わない報酬に対して「本当は面白かったのかもしれない」と、認知に修正を加えて不協和を解消しようとする心理が強く働いているとした。


甘いレモンかもしれない
・禁煙できない→むしろ喫煙者のほうが頭いい。
・菜食主義耐えられない→むしろお肉も食べないと体に悪い
・50万円の掃除機を買ったら販売会社が摘発された→むしろよく吸う
・50万円の布団→むしろよく寝れる
・ブラック企業勤務→むしろこの仕事が好き


【まとめ】

みんな!オラにちっとつ元気を分けてくれ!Tweet

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