第一章 論理的な主張の仕方
目次 ■論理的に表現することの大切さ。 ●言いたい事がうまく伝わらない原因はたいてい書き手の側にある。 ●論理的でない主張は、もともと同じ意見をもつ者からしか支持されない。 ■論理的に書く技術。 ●論理の原則1【結論を書く】 ●論理の原則2【結論を支える理由を書く】 ●論理の原則3【理由を支える事実を書く】 ●論理の原則4【隠れた前提を書く】 ●論理の原則5【結論を支える根拠を書く】 ●論理の原則6【結論と根拠の繋がりを書く】 ●論理の原則7【根拠を支える事実を書く】 ●論理の原則8【言葉の定義を詳しく書く】 ●論理の原則9【根拠をたどって結論に着く】 ■親切な文章の書き方。 ●文章の書き方1【丁寧語(です・ます調)で書く】 ●文章の書き方2【接続詞を使う】 ●文章の書き方3【平易な表現を使う】 ●文章の書き方4【冒頭で文章の全体像を見せる】 ■Plan-Do-See(プラン・ドゥ・シー)計画・実行・反省。 ●論理の原則11【計画】 ●決定権の確保 ●実行 ●反省 ■論理的に考えるための補足。 ●論理的な思考法1【正しさ(善悪)は視点(前提)よって変化する】 ●論理的な思考法2【手段の正しさは、目的によって変化する】 ■論理的に表現することの大切さ。 我々日本人の中には、主張を述べるさいには、正しい結論さえ述べればそれで十分であり、根拠を述べる必要は無いと考える人がいます。しかし、根拠の無い主張が同意を得られるのは、もともと同じ意見を持つ者からだけで、意見の異なる人を説得することはできません。 これはつまり、始めから何も主張していないと同じ事です。意見の異なる人を説得できる主張は、根拠のある論理的な主張だけです。 掲示板など議論を読んでいると、自分の言いたい事がうまく伝わらない原因を、相手の読解力が低いせいにして非難する人を見かけます。しかし実際は、書き手の表現力が不十分であることも多いのです。 というのも、日本の国語教育では「理解しにくい文章を理解する」訓練はしていても「理解しやすい文章を書く」訓練はあまりしていないためです。(最近はどうなのか知りませんが。) 日本の学校では文章の書き方として5W3Hを教えています。しかし5W3Hは、報告用、連絡用の文章を書くときには役立ちますが、政策や事業計画を論じるためには不十分です。 論じる文章を書くためには5W3Hの他にも、「理由」・「根拠」・「視点」という三つの前提と、理由と根拠を支える「事実」が必要なのです。逆にこれさえ覚えてしまえば、論理的な主張は誰にでも簡単にできます。 ◇5W3Hとは?
5W3Hには、意見を論じるために必要な三つの前提のうちの「根拠」と「視点」が含まれていません。 ちなみに、自分の考えを他者に伝える方法には、文章で「書く」方法と、口で「話す」方法がありますが、ここでは文章で書く方法を前提にして解説をします。 なぜなら、自分の考えを一度文章に起こすことにより、論理の構造が明らかになるからです。もちろん、口頭の議論でも論理の構造は同じですので、そのまま応用してください。 ●論理的でない主張は、もともと同じ意見をもつ者からしか支持されない。 もしも、100人中30人があなたと同じ考え方をしているとしたら、残りの70人はあなたとは異なる考え方をしている事になります。仮に、あなたの意見を正式に採用するためには、100人中51人の賛成が必要だとしたら、あなたは、あなたとは異なる考え方を持つ70人の中から、少なくとも21人を説得しなければなりません。 そのためには、異なる考え方を持つ人でさえ「その意見はもっともだ!」と納得するような、論理的な主張をする必要があります。 ◇錯覚に注意! もし、100人中70人があなたと同じ考え方を持っていたとしたら、例えあなたが非論理的な主張をした所で、70人もの人々から圧倒的な支持を得るでしょう。 もしかしたら、あなたはそれだけで議論に勝ったような気分になるかもしれません。 しかし実際には、異なる考え方を持つ人は誰一人として説得できていないのです。 これは始めから何も主張していないのと全く同じ事なのです。 主張をするときは、自分とは異なる考え方を持つ人や、主張のテーマに関する予備知識を持たない人が、本当にこの説明で理解できるだろうか? と考えながら書く習慣が非常に大切になります。 この章では、自分とは異なる考え方を持つ人を説得するために必要な、論理的な主張の書き方を、順を追って説明していきます。 (これからの説明に登場する例文、【主張A】の内容は架空のものです。したがって、登場する資料も架空のものなのですが、ここでは論理構造の説明が目的なので、資料などは真実であると仮定して読み進めてください。) では次の【主張A】という例文を読んでください。
この文章には、自分と異なる考え方を持つ人を説得するために必要な三つの前提、「理由」・「根拠」・「視点」、それから理由と根拠を支える「事実」、そして「結論」が含まれています。 それぞれ、緑色の字で書かれた部分が理由と、理由を支える事実です。黄色で書かれた部分が視点です。青い字で書かれた部分が結論です。赤い字で書かれた部分が根拠と、根拠を支える事実です。 これから、この文章が完成するまでを、順を追って説明していきます。 主張を書くときには、結論を必ず書かなければなりません。 結論とは、書き手の主張の核(最終的に言いたい事)です。 5W3Hの「What(課題・目的・目標) … 何を」に当たります。 結論は明言しましょう。明言しないと何が言いたいのか分からない主張になります。 【主張A】の中では
・だめだめな例。
5W3Hの「Why(目的・狙い・理由) … 何のために」に当たります。 【主張A】の理由: 犯罪率が増加している。 未完成の【主張A】に、理由を加えて結論と繋げると↓
緑色の字で書かれた部分が理由です。理由は結論と関係のある事を書かなければなりません。理由の数が多くて、内容が具体的なほど強力な主張になります。 「犯罪率が増加してるっていうけど、その情報は真実なの?」 このように疑う人もいます。なぜなら、書き手は自分に都合の良い様にしか書いていない可能性があるからです。ですから、このような考え方は正しいのです。 どんな主張にでも疑うクセを身につけてください。(このクセは第二章「論理的な反論の仕方」で役に立ちます) 相手に信用してもらうために、理由を支える事実を提示して、理由が真実であることを証明しましょう。ここで言う事実とは統計資料などの証拠を指します。 【主張A】の理由を支える事実: 警察庁の警察白書によると過去五年間にわが都市の犯罪率は1%上昇している。 これを【主張A】に書き加えます。
・資料の出典は、信用性に関わるので必ず明記しましょう。 ・事実の数が多くて、内容が具体的なほど強力な主張になります。 隠れた前提とは、主張の中で明言されていないが、真実として扱われている(真実でないと主張が成り立たなくなる)前提のことを指します。 大抵の場合、結論と理由(や根拠)の間にある、述べられていない前提のことを指します。 例えば【主張A】にも隠れた前提があります。 分かりますか? 答えは背景と同じ文字色で隠してあるので、下の空白枠をマウスでドラッグして表示してください。
説明する前から気が付いていた人は論理的な人でしょう。 論理的な人はこの隠れた前提を見つける能力が非常に高いのです。 【主張A】の隠れた前提を明言して、ちゃんと書くと次の文章になります。
書き手は主張を書くときに、自分の頭の中の見て書いています。したがって、自分にとって自明な前提をつい省略してしまうクセがあるのです。 しかし、読み手と書き手は同じ知識を共有していません。だから、読み手にとっては自明ではない前提を省略してしまうと、読み手からは結論と理由や根拠の間に大きな隔たりがある主張に見えてしまうのです。 もちろん、隠れた前提を辞書レベルまですべて書くと、クドイ文章になりますが、隠れた前提が多い主張は(特に異なる考え方を持つ人から見ると)論理飛躍のある主張となります。 注意するべき点は、書き手から見ると論理飛躍でなくとも、読み手から見ると論理飛躍になっている点です。書き手の頭の中にある前提知識や思い込みを、読み手は共有していないのです。 もっとも【主張A】の場合なら、隠れた前提を書かなくても、論理飛躍だと受け取る人は少ないでしょうけど。 大事な事: 隠れた前提があると、論理飛躍が起きる。 アンサイクロペディアの面白い論理飛躍の例。
関連記事: 第二章 前提と結論のつながり 【隠れた前提には三つの種類がある】 次に書くべきものが三種類の前提の一つである「根拠」です。根拠とは、主張の中で“その結論がなぜ正しいと言えるのかを説明する部分”です。三つの前提の内、結論を直接支える柱の事を根拠と呼びます。 自分とは異なる考え方を持つ人を納得させるためには、根拠が必ず要ります。結論の正しさは、根拠の数と質により決まります。 【主張A】の根拠 :神奈川県では警察官の増員によって犯罪率が低下した事例がある。 【主張A】に根拠を書き加える。
赤い字で書かれた部分が根拠です。根拠が結論を支えているのが分かりますか? 主張は根拠の数が多くて、内容が具体的なほど強力になります。 普通の主張には根拠を支える根拠もありますが、【主張A】では簡単に、根拠は一つだけとします。 ・だめだめな例。
結論「警察官を増員するべき。」を支える正当な根拠になっているでしょうか? 根拠が正当であるためには、結論と根拠の間が因果関係か相関関係で結ばれていなければなりません。 ◇因果関係とは 原因と結果の関係ことです。結論と根拠の間の関係を説明することができれば、因果関係があると言うことができます。 【主張A】の場合は
◇相関関係とは 複数の事象の一方が変化すれば、他方も変化するというような関係の事です。 二つ以上のデータを示して、連動性を説明できれば、相関関係があると言えます。 【主張A】の場合は
ただし、相関関係には弱点があります。それは、 1. 原因と結果の仕組みが明らかではないこと。 2. 1ゆえに、一見関係あるかのように見えるけど、もしかしたら、ただの偶然かもしれないこと。 それゆえ、相関関係だけ見せておいて、あたかも因果関係があるかのように錯覚させようとする人もいるので注意してください。 次の統計は"相関関係はあるけど因果関係が無い統計"の例です。 (ネットで拾ったコピペ集からの抜粋なので、おそらく造り物です。)
そんなバカな! 上に挙げたデータに因果関係があるか否かは、対照実験という検証を行えば判ります。ここでは、「犯罪者の98%はパンを食べている」には因果関係があるかどうかを例に挙げて説明します。 まずは被験者を集めて、二つのグループに分けます。次に一方のグループにだけパンを与え、パンを与えたグループの犯罪率が上がるかどうかを観察すれば良いのです。 もしパンを与えたグループの犯罪率だけが上昇したら、パンと犯罪率には因果関係があると言うことができます。 ただしその差は誤差ではなく、有意差でなければなりません。 【主張A】の根拠「神奈川県では警察官の増員によって犯罪率が低下した事例がある。」に対しても、「それって本当に?証拠があるの?」と、疑う人がいます。 前にも書いた通り、その考え方は正しいのです。何でも疑ってかかるクセを身につけてください(このクセは次の章の"反論の仕方"に関係あります)。 根拠の質を高めるためには、根拠が確かなものである事を証明するための事実(統計資料など)を提示する必要があります。 それでは、異なる考えを持つ人を説得するために必要な、事実を書きましょう。 【主張A】の場合は、神奈川県警の警察官の人員の推移を表した資料と、神奈川県の犯罪率の推移を表した資料を用意すれば良いでしょう。それを書き加えます。
資料の出典を必ず明記しましょう。資料がネット上にあるのなら、URLを書くと親切です。出典元を忘れてしまった場合はその事を正直に書きましょう。少なくとも、何も書かないよりは、論理性が高くなります。
では、事実や根拠はどのようにして探せば良いのか? とお考えの方もいると思いますので、四つの方法を紹介します。 ◇方法1 インターネットで調べる。 検索エンジンで調べたい用語と資料の形式で複合検索をすれば、欲しい情報が発見できる可能性があります。またGoogle検索で「site:go.jp」と入力して複合検索をすると、日本の政府機関の公的文書のみを検索結果に表示できます。 例:「神奈川県 犯罪率 統計」 「投票率 推移」 「自殺者数 2007年」 「平均所得 site:go.jp」など。 厳選したリンクと書籍に掲載しているデータベースサイトもご活用ください。 ◇方法2 調べたい分野の書籍を読む。 Amazonで、調べたい分野のキーワードで検索する。私の経験則では、レビューの星の数が4つ以上の本を買うとハズレが少ないようです。 著者が修士号を持っていたり、その分野の研究者なら有益な情報が多いように思います。 ◇方法3 Google ブック検索を利用する。 Google ブック検索は書籍の本文を検索して中身を見ることができるサービスです。 文章中の重要な言葉の定義は、詳細に説明しましょう。 議論をしているとよく、書き手と読み手の言葉の定義が食い違うことが原因となり、書き手の真意と読み手の解釈が異なるという誤解が生じます。(その事については、第二章で更に詳しく書きます) 【主張A】では、「犯罪率」という言葉の定義を詳しく説明します。 犯罪率の定義 :人口10万人あたりの犯罪発生件数。 【主張A】に犯罪率の定義を書く。
関連記事: 第二章 論理的な反論の仕方 論理間違い4 【隠れた前提の一種 言葉の定義】 主張の書き方はわかったけど、主張の中身そのものを考え出すにはどうしたら良いのか?『論理の原則6』で説明したように、因果関係の順序を追って考えましょう。 理由→根拠→結論の順序で考えれば良いのです。 (ここまでの【主張A】を使った説明では結論をはじめに書きましたが、これはあくまでも話を分かりやすくするためでした。) 【主張A】の場合ならば
これが結論→理由→根拠の順序で考えるタイプの人だと・・・
こうして後付けされた理由や根拠はいい加減なものであったり、ひどいときには捏造される事もあるのです。こうしたタイプの人は普通主張する内容とは別の目的を持っています。 例えば、この人は警察の役人で組織を大きくしたいがために主張しているだけかもしれません。こうした人は、本当の理由や根拠を書くと誰も納得しない事が分かっているので、本音とは別のもっともらしい理由や根拠を後付けするのです。 このタイプの人は、議論されている議題について利害関係色の濃い人である事が多いのですが、そのことは第四章と五章で詳しく書きます。 ちなみに、仮説は事実に比べると弱い根拠ですが、それが仮説であると前置きをしたり、語尾を推測系(〜でしょう、〜の可能性がある等)にして述べればなんら問題はありません。 ■親切な文章の書き方 接続詞を使わない、「Aである、Bである」の形式の文章だと、どちらが結論でどちらが根拠なのかが判りません。一方、「Aである、なぜなら、Bだから。」の形式なら、Aが結論でBが根拠だということが容易に判ります。
一般向けの文章を書く場合は、難解語や予備知識を必要とする専門用語を使用すると、読み手を説得できる確率は下がります。高校生でも理解できる文章を意識しながら書くと良いでしょう。やむなく、専門用語を使う場合は解説をつけましょう。
案内文とは、その文章で論じたい議題についての簡潔な説明文の事です。案内文が無いと、文章を最後まで読んだ後に、また冒頭に戻って読み直さなければなりません。 【主張A】に案内文を書き加えるとすれば、
案内文は、主張のテーマや結論が一目で分かる様に書きましょう。 次の例文は、案内文が無く、結局何が言いたいのか最後まで分からない文章です。 (ネットで拾ったジョーク集からの抜粋です。)
もう一つ。
この構成は、ジョーク文としては正しいのですが、論文としては悪い例です。 ■Plan-Do-See(プラン・ドゥ・シー)計画・実行・反省。 計画を立てる際に重要となる点は、次の五つです。
特に政策・ビジネス系の主張の場合は、費用の概念を無視できません。主張の中で必要な費用について触れられていないと、必ずと言って良いほど後で他人から指摘されるので、できるだけ計画に盛り込んでください。 細かい数字が解らなければ概算でも良いです。何も書かないよりは論理性が高くなります。 費用や労力と、結果として得られる期待を天秤にかけた上で、本当に実行する価値があるのかどうかが読み手にとっては重要な点になります。 【主張A】の計画を立てるとしたら:
政策の多くは費用と効果のトレードオフになります。 日本は民主主義国家ですから政策を実現するためには、他者の賛成票をより多く集める必要があります。そのためにはより多くの人が、政策の費用対効果が充分であると納得する必要があるのです。 計画を実現させるためには自分が実行の決定権を持つか、決定権者の同意が必要です。物事正しさは視点によって異なりますので(後述)、自分と決定権者との利害が対立している場合には駆け引きを行わなければなりません。その具体的な方法は第四章で書きます。 実際に計画を上手に現場に落とし込んで、完遂させるための技術ですが、それはこの章の趣旨とは異なり、組織運営の分野になります。多人数で行う作業なら、他人の協力を得たり、従わせる事ができないと、計画を実行する事はできません。リーダーの腕の見せ所です。 効果的であると言われている方法は、 ・朝礼で計画を周知徹底する。 ・計画の途中で、しつこく何度も内容の確認をする。 などがありますが、経営のの本を読んだほうが良いでしょう。 実行できたら、当初の目標を達成できたか、不測の事態は起きなかったかなどを調べて、 悪い箇所があったら原因を分析して改善しましょう。 計画・実行・反省を合わせて、Plan-Do-Seeと呼ばれています。 ■論理的に考えるための補足。 誰の視点を前提に置いて考えるかによって、結論の正しさは変わってしまいます。 どういう意味かというと、例えば
実は地動説というものは普遍的な真理ではありません。 このように、正しさは「視点」という前提によって変化します。 日常の議論でも、人物の「視点」によって正しさや善悪が変化する場合があります。その理由は大きく分けて三つあります。「利害の対立」、「価値観の対立」、「感情の対立」です。一つずつ具体的に説明していきましょう。ちなみに、ここで言う「正しい」とか「善」の定義は、その人物の利害・価値観・感情に合致する考え方のことをいいます。その反対が「悪」です。 1.利害の対立。(利害に関する議論。) 政策議論などがこれに当たります。日常生活の例で考えてみましょう。ある都市で、将来赤字が見込まれる駅の建設計画が持ち上がったとします。この駅が完成したら、市民の税金で赤字を補填しなければなりません。それゆえ、駅の利便性が、赤字の補填と引き換えにするほどには高くない、と考える人は建設に反対します。 その一方で、駅が完成すれば周辺の土地は値上がりします。すると、駅周辺の地主にとっては、赤字を補填するために出ていく金額よりも、土地が値上がりした影響で入ってくる金額のほうが大きくなります。それゆえ、個人の利益を優先したい地主は、駅の建設に賛成します。このように、利害が対立しているとき、「視点」によって正しさは変化します。 2.価値観の対立。(価値判断を伴なう議論) 価値観とは、「何にどれくらいの価値を置くか」、といういわばその人の中での価値の優先順位のことです。例えば、Aさんは、「人生の中で一番大切なことは、おしいものを食べることだ」、という価値観をもっています。一方でBさんは、「人生の中で一番大切なことは、健康でいることだ」、という価値観をもっています。価値観はその人固有の考え方なので、やはり「視点」よって正しさは変化します。 ほかにも、「どの映画が一番面白いか?」、「どの画家が最も素晴らしいか。」などの議論も価値判断を伴ないます。 3.感情の対立 同じ事実からでも、その人の立場や性格によって感じ方が変わります。次の例文は、2ちゃんねる(掲示板)にて行われた議論です。
このように感情にもとづく善悪も「視点」によって変化します。 ・結論の正しさは、誰にとっての正しさなのか、なぜその人にとっては正しい(あるいは間違っている)と言えるのか、他の人からはどう見えるのか、そこに注目するのは非常に重要です。でないと、独善的な意見を見抜けなかったり、自分が独善的になってしまって同意を得られにくくなります。 【主張A】を思い出してください。このなかでは、
・では実際に「視点」の違いによる対立が想定されるときはどうしたらよいのでしょうか? 簡単にまとめます。 1.利害の対立。 利害を調整した代案を提示する。初めの案に反対した人の「損失の度合い」を減らしてあげる。例えば、原子力発電所の設置に反対している住民に対しては、国からの交付金を支給することで調整する、など。 2.価値観の対立。 相手の価値観に影響を与えるような説得力の強い説明をする。相手の自尊心を傷つけないようにするのがコツ。相手の価値観が誰にも迷惑をかけないのなら無理に変えなくても良い。無理矢理変えようとすると「価値観の押しつけ」になる。 3.感情の対立。 あることについて、自分がどう感じているのかを率直に伝える。「わたし」を主語にして話すのがコツ。 これらの対立の解消に仕方については第七章で詳しく解説しています。興味のある方はご覧ください。 また自分と相手の利害が対立したままになると、相手が権力闘争をしかけてくることがあります。それについては第四章で解説します。 次の例文は、視点によって正しさが変化するジョーク文です。(例により、ネットで拾いました)
似たような例文をもう一つ。
『証明』と『説得』は異なります。 例えば営業の仕事で、お客様からクレームが来たが、お客様の方に非があるという状況を想定してみましょう。 この時に、二つの目的を考えてみます。 目的1: お客様に非がある事を証明する。 目的2: 利益を増やす。 それぞれの目的を達成するための手段を考えるとすれば、目的1を達成するためならば、自社の正当性を理詰めで証明すれば良いだけで良いでしょう。 一方、目的2を達成するためならば、先に謝罪をしておいて、お客様を安心させてから、苦情をよく聞き取って、納得をしてもらってから、気分良く帰せば、またサービスを利用してもらえたり、そのお客様が良い口コミを広めてくれるでしょう。 しかし、目的1の達成手段を用いて目的2に対処すれば、お客様は議論に負けて納得しないまま、怒って帰り、二度とサービスを利用しないかもしれませんし、そのお客様が悪い口コミを広めるかもしれません。 これでは「利益を増やす」という目的に対して、正しい手段をとったとは言えません。 時には、正しい事をただ正しいと述べるだけでは目的を達成できないことがあります。特に人を動かす時はそうです。相手の感情の動きに合わせた説明の仕方をする必要があります。そのためには、第四章に出てくる心理学の知識を(できれば本で)学べば効果があるでしょう。 正しい事をただ正しいと述べる人は、序章で紹介したレベル2の人です。一方、他人の考え(利害)と感情を把握して"やり方"を変える人はレベル3の人です。 大事な事: その時の「論理的な手段」が何であるかは、目的によって異なります。 これは、第四章の『駆け引きの論理』にも通ずる事なので、覚えておいてください。 論理的な主張の仕方についてもっと詳しく学習されたい方には、小野田博一氏の著書『論理的に書く方法』をお薦めします。主張の基本原則をやさしく解説しているので、入門書に最適です。
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| 序章 論理的に考えるメリット 第一章 論理的な主張の仕方 第二章 論理的な反論の仕方 第三章 詭弁集と反論法 第四章 権力闘争 第五章 統計のウソを見抜く方法 第六章 思考を歪める心理効果 第七章 『親業』 対立解消のプロセス 実践 論理問題集 議論練習 掲示板 みんなの主張 厳選したリンクと書籍 論理的な議論の仕方TOP ご意見、ご感想用の掲示板はこちら。 誤字脱字・リンク切れのご指摘・ご改善案なども掲示板へ、よろしくお願い致します。 管理人へ連絡を取りたい方は、b4-faz1-mu85@ez.117.cxまで。 |
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| 序章 論理的に考えるメリット | 第六章 思考を歪める心理効果 |
| 第一章 論理的な主張の仕方 | 実践 論理問題集 |
| 第二章 論理的な反論の仕方 | 議論練習 掲示板 |
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| 第四章 権力闘争 | 厳選したリンクと書籍 |
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