思考を歪める心理効果 認知バイアス

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社会心理学【一級市民と二級市民 (内集団バイアス・恨みに訴える論証)】

内集団バイアスとは、自分が帰属している集団には好意的な態度をとり、外の集団には差別的な態度をとる心理現象のこと。「内集団ひいき」とも呼ばれる。

集団意思決定と理論より引用)
自己が所属する集団を内集団、それ以外の集団を外集団と呼ぶ。一般に、内集団への所属意識が強まれば強まるほど、集団への愛着や忠誠心が高まる。

なぜ人は差別するの?「内集団偏向」「ネポティズム」って何?より引用)
他よりも”自分の側”に属するもののほうが「良い、優れている」と思いたがる傾向を人間は持っている。これは誇りや自尊心と深く結びついている。

身内びいきってすごいのね:差別と偏見の心理学(2)より引用)
いわゆる身びいきについて調べるため,Bigler はサマースクールに参加した子どもに対して実験を行いました。(中略) 同じ色の服を来ているだけで自分の集団を高く評価してしまうことがわかりました。

競争・協力関係における内集団バイアスの変化より引用)
内集団バイアスの原因は、自己評価を高め ようとする動機である自己高揚動機にあるとされている。そして、自己評価が脅かされているほど、集団への自己同一視が大きいほど内集団バイアスが現れやすい。
-------------------引用終わり----------------

・一方、恨みに訴える論証とは、人々がある物事に対して抱いている恨みの感情を利用して、自己の主張を認めさせようとする詭弁です。

恨みに訴える論証と内集団バイアスを同時に利用した例として、ドイツで起きたユダヤ人虐殺を挙げましょう。

差別側:アーリア人(ドイツの多数派民族)
被差別側:ユダヤ人(ドイツの少数派民族)

1922年、ドイツの通貨が暴落して、国民のそれまでの貯蓄や給料は紙切れ同然と化してしまいました。そのとき、ユダヤ人達だけは逸早くお金を証券や土地、金などの(インフレでも価値が下がらない)資産に投資し、財産の目減りを阻止していました。

しかし、この一件で、ユダヤ人はアーリア人の妬みを買ってしまったのです。その後、アメリカに端を発した世界大恐慌により、ドイツにも大量の失業者が発生して、国内からは体制に対する不満が噴出しました。

この頃、ナチスが国民に向けて、「不況を作り出したのはユダヤ人だ」とする演説を行い、アーリア人の怒りと恨みを煽ったのです。

ナチスは、ユダヤ人が劣った民族であると宣伝するために、アーリア民族は類人猿から進化した優良種で、ユダヤ人は下等な猿から進化した劣等種であるとする学説(優生思想)を発表しました。しかし、この学説はニセ科学による全くの捏造なのです。

しかし、アーリア人はユダヤ人を妬んでいたため、ナチスの学説は大衆に受け入れられ、ナチスは選挙に勝利しました。その後、ユダヤ人は強制収容所に移され、500万人〜700万人(Wikipedia出典)がガス室で虐殺されたと言われています。

優生思想とは、人間に生まれつきの優劣の差を設定し、劣等・不要と判断された人々を蔑視・否定する思想のことです。ナチスは「我々を不幸にしたのはユダヤ人だ!(恨みに訴える論証) 我々の方が優れた民族だ!(内集団バイアス)」と主張し、優生思想を実現させたのです。

優生思想にはもっともらしい根拠が後付けされています。なぜなら、根拠があれば、一級市民は罪悪感を感じず、安心して差別を行うことができるためです。

人は内集団バイアスを通して物事を見ると、論理的な思考力が麻痺してしまいます。優良種に認定された人々にとっては、その方が都合が良いのです。思い出してください、結論に賛成だと論理の欠陥が見えにくくなる法則です。

・血液型性格判断も内集団バイアスの力を借りていると考えられます。方法は簡単。人間を血液型という属性で分類して、集団間に優劣の差を設定するだけです。

A型は好かれる性格(一級市民)に、O型とAB型は普通の性格(二級市民)に、B型は嫌われる性格(三級市民)に設定します。するとその思想は、一級市民に認定されたA型の人々の手によりあっという間に広がります。

(余談ですが、リンク集に血液型性格判断に対する反論サイトが載っているので興味のある方はどうぞ。)

・アメリカの小学校で、差別についての実験が行われました。生徒を瞳の色により二つの集団に分けて、一方を優良種、他方を劣等種と認定し、生徒の行動を観察したものです。

青い目 茶色い目 〜教室は目の色でわけられた〜より引用)

1968年4月、アメリカ北西部のアイオワ州・ライスピルの小学校で人種差別についての実験授業が行われた。

小学3年生の担任であるジェーン・エリオット先生は、キング牧師の死後、黒人指導者に無神経な質問をする白人の解説者の傲慢な態度を見た。そして「子どもたちを差別意識というウイルスから守りたい」という思いを持ち、次の日にある実験授業を試みた。

クラスを青い目と茶色い目の子どもに分け、「青い目の子はみんな良い子です。だから5分余計に遊んでもよろしい」「茶色い目の子は水飲み場を使わないこと。茶色い目の子はダメな子です」というように、青い目の人は優れ、茶色い目の人は劣っていると決めて1日を過ごすというものだ。

逆に翌日は茶色い目の人は優れ、青い目の人は劣っているとして生活する、というものだった。

実験の様子は
ABC放送の「目の色が巻き起こした嵐」と題した映像として残されている。エリオット先生のこの授業は差別される側の気持ちを実際に体験し、子どもたちの人種差別に対する考えを変えることができた。

そして、もう一つ重要なことが判明した。実験授業の2週間前と授業をしている2日間、そして授業の2週間後に国語と算数のテストを行った。子どもたちの点数は優れているとされているときに最高で、劣っているとされている時に最低を示した。

そして、授業後はクラス全体の成績がかなり高くなったという。

2日間の授業で大切なことを学び、その大切なことを学んだという意識が生徒たちに自信を与え、優れていると言われた時の高い得点を維持できるようになったのだった。

(以下略。全文はリンク先でお読みください。)

2006年にカナダの小学校でも同様の実験が行われました。

『第34回日本賞受賞番組 ▽グランプリ“特別授業・差別を知る”カナダ・ある小学校の試み』より引用)

実験の初日、ルブラン先生は子供達に「134センチより背の低い子は優秀。そしてこれは科学的根拠に基づくものだ」と説明する。

その日は、背の低い子達が常に優遇され、背の高い子達は差別される。翌日は、立場が逆転。「背の高い子のほうが優秀だったことがわかった」として、子供達は全く逆の待遇を受ける。

こうして、子供達に「いわれのない差別を受けるとどんな気持ちになるのか」、身をもって体験させる。この実験の原型は、1960年代から英米で研究されてきた。アメリカの小学校教師がクラスを「青い目と茶色い目」にわけて、人種差別の理不尽さを伝えようとした授業が1988年にドキュメンタリーとして放送されている。

それをモデルとして、カナダの小学校が再びこの実験授業に取り組んだ。実験を通して、教師や子供の心情がどのように変化していったのかを授業中のやりとりや、インタビューで丁寧に描いている

(以下略。全文はリンク先でお読みください。)

実験の前半で差別された生徒は、後半では差別する側に回っています。(ただし、前半の実験が終了した時点で、前半で差別された生徒にはタネ明かしをしています。)

これらの実験の様子を動画で見ることができます。

アメリカ版 青い目 茶色い目 〜教室は目の色で分けられた〜 Class was (2) (3)

カナダ版 差別を知る 〜カナダ ある小学校の試み〜   1/5

ちなみに次のような実験もあります。
【ドキュメンタリー】 特殊メイクで白人⇔黒人の顔を交換して生活 1/34 (ニコニコ動画)
- 白人の一家と黒人の一家が特殊メイクにより、白人と黒人の立場を入れ替えて生活し、周りの反応を確かめる人種差別に関する実験番組です。

これまで信じられてきた(内集団バイアスが関わっている)優生思想の一覧.

・喫煙者は非喫煙者に比べて、自己管理能力が低い。
・女は男に比べて、論理的に考えるのが苦手。(A)
・Aゆえ、女は政治家に向かない。
・Aゆえ、女は管理職に向かない。
・男の指導者は戦争をするが、女の指導者は戦争をしない。(B)
・Bゆえ、男は政治家に向かない。
・女は男に比べて、数学が苦手。
・女は男に比べて、車の運転と地図を読むことが苦手。
・大和民族は朝鮮民族や満州民族に比べて、優れている。
・アーリア民族はユダヤ民族に比べて、優れている。
・白人は黒人に比べて、優れている。
・部落出身者は一般の人に比べて、劣っている。
・女の脳は男の脳に比べて、ほとんど理想的な働きをする。

もしも、誰かがあなたの心の中にある内集団バイアスに訴えてきたら、充分に注意してください。

お薦めサイト: パラビオシス/差別意識について 価値基準についての解説。面白いです、一読する価値があります。
関連記事1: 第五章 権力闘争 【分断して統治せよ】
関連記事2: 第二章 論理的な反論の仕方 【結論に賛成だと論理的思考力が麻痺する】
関連記事3: 第四章 ニセ科学の見抜き方 【対照実験をしていない】

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目次
認知バイアスとは?
社会心理学【一級市民と二級市民 (内集団バイアス・恨みに訴える論証)】
認知バイアス【勝ち馬に乗れ (バンドワゴン効果)】
認知バイアス【赤信号みんなで渡れば怖くない (リスキーシフト)】
認知バイアス【不快な事実は認めたくない (感情バイアス)】
認知バイアス【印象は基準により変化する (アンカー効果)】
認知バイアス【都合の良い事実しか見ない (確証バイアス)】
認知バイアス【成功は自分の力、失敗は他人のせい (自己奉仕バイアス)】
認知バイアス【もう聞きたくないから黙れ! (認知的不協和)】
認知バイアス【今やめたらこれまでの投資が無駄になる (コンコルド効果)】
認知バイアス【堅実性を選ぶか、賭けに出るか (プロスペクト理論)】
認知バイアス【表現が変われば印象も変わる (フレーミング効果)】
認知バイアス【占いはなぜ当たるのか (バーナム効果)】
認知バイアス【後光が差す (ハロー効果)】
認知バイアス【俺は最初から分かってたよ (あと知恵バイアス)】
認知バイアス【見られていることを意識してしまう (観察者効果)】
教育心理学【どうせ頑張っても無駄だよ (学習性無力感、学習性無気力)】


さらに対人関係における様々な心理効果について知りたい方には、斉藤勇氏の『図解雑学 人間関係の心理学』をお薦めします。(なか見!検索できます。)


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