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最終更新日:2016.10.22
このページは「価値観の違い」と「認知的不協和」を読んでいる前提で編集しています。
内集団バイアスとは、自分が所属している集団には好意的な態度をとり、外の集団には差別的な態度をとる心理現象のことです。「内集団ひいき」とも呼ばれます。
(集団意思決定と理論より引用)
自己が所属する集団を内集団、それ以外の集団を外集団と呼ぶ。一般に、内集団への所属意識が強まれば強まるほど、集団への愛着や忠誠心が高まる。
(なぜ人は差別するの?「内集団偏向」「ネポティズム」って何?より引用)
他よりも”自分の側”に属するもののほうが「良い、優れている」と思いたがる傾向を人間は持っている。これは誇りや自尊心と深く結びついている。
(身内びいきってすごいのね:差別と偏見の心理学(2)より引用)
いわゆる身びいきについて調べるため,Biglerはサマースクールに参加した子どもに対して実験を行いました。(中略) 同じ色の服を来ているだけで自分の集団を高く評価してしまうことがわかりました。
(競争・協力関係における内集団バイアスの変化より引用)
内集団バイアスの原因は、自己評価を高めようとする動機である自己高揚動機にあるとされている。そして、自己評価が脅かされているほど、集団への自己同一視が大きいほど内集団バイアスが現れやすい。
次に「恨みに訴える論証」とは、人々がある物事に対して抱いている恨みの感情を利用して、自己の主張を認めさせようとする詭弁です。
恨みに訴える論証と内集団バイアスを同時に利用したであろう例に、ドイツで起きたユダヤ人虐殺があります。
差別された側→ユダヤ人(ドイツの少数派民族)
1922年、ドイツの通貨が暴落して、国民のそれまでの貯蓄や給料は紙切れ同然と化してしまいました。このときユダヤ人達はいち早くお金を証券や土地、金などの(インフレでも価値が下がらない)資産に投資し、財産の目減りを阻止していました。
しかし、この一件でユダヤ人は他のドイツ人の妬みを買ってしまったのです。その後、アメリカに端を発した世界大恐慌により、ドイツにも大量の失業者が発生して、国内からは体制に対する不満が噴出しました。
この頃、ナチスが国民に向けて、「不況を作り出したのはユダヤ人だ」とする演説を行い、ドイツ人(非ユダヤ人)の怒りと恨みを煽ったのです。
ナチスは、ユダヤ人が劣った民族であると宣伝するために、ドイツ人(非ユダヤ人)は類人猿から進化した優良種で、ユダヤ人は下等な猿から進化した劣等種であるとする学説(優生思想)を発表しました。しかし、この学説はニセ科学による全くの捏造でした。
それでもドイツ人(非ユダヤ人)はユダヤ人を妬んでいたために、ナチスの学説が大衆に受け入れられて、ナチスは選挙に勝利しました。その後、ユダヤ人は強制収容所に入れられて、500万人~700万人(Wikipedia出典)がガス室で虐殺されたと言われています。
優生思想の意味をウィクショナリー辞典から貼っておきます。
身体的・精神的に秀でた能力を有する者の遺伝子を保護し、逆にこれらの能力に劣っている者の遺伝子を排除して、優秀な人類を後世に遺そうという思想。優生学の成果に立脚する。人種差別や障害者差別を理論的に正当化することになったといわれる。
優生学とは
人類の遺伝的素質を向上させ、劣悪な遺伝的素質を排除することを目的とした学問。
優生思想にはもっともらしい根拠が後付けされています。なぜなら、根拠があれば、一級市民は罪悪感を感じず、安心して差別を行うことができるためです。更には「優秀な人類を後世に遺すべきである」という思想は自然主義的誤謬にもとづいている恐れがあります。
人は内集団バイアスを通して物事を見ると、論理的な思考力が低下します。前にも書いた結論に賛成だと批判的思考力が麻痺する現象です。優良種に認定された人々にはもう批判的に思考する必要がなくなるのです。
一時期はやった血液型性格判断も内集団バイアスの力を利用した優生思想的な側面があります。あれは人間を血液型という属性で分類して、集団間に優劣の差を設定していました。
A型はほぼ欠点のない性格(一級市民)に、O型とAB型は並の性格(二級市民)に、B型は欠点の多い性格(三級市民)に設定されていて、それが一級市民に認定されたA型の人々の手によりあっという間に広まった構図だと思います。
リンク集に血液型性格判断に対する反論サイトが載っているので興味のある方はご覧ください。
次はアメリカの小学校で行われた差別についての実験教室です。生徒を瞳の色により二つの集団に分けて、一方を優良種、他方を劣等種に認定し、生徒の行動を観察したものです。
(青い目 茶色い目 ~教室は目の色でわけられた~より引用)
1968年4月、アメリカ北西部のアイオワ州・ライスピルの小学校で人種差別についての実験授業が行われた。
小学3年生の担任であるジェーン・エリオット先生は、キング牧師の死後、黒人指導者に無神経な質問をする白人の解説者の傲慢な態度を見た。そして「子どもたちを差別意識というウイルスから守りたい」という思いを持ち、次の日にある実験授業を試みた。
クラスを青い目と茶色い目の子どもに分け、「青い目の子はみんな良い子です。だから5分余計に遊んでもよろしい」「茶色い目の子は水飲み場を使わないこと。茶色い目の子はダメな子です」というように、青い目の人は優れ、茶色い目の人は劣っていると決めて1日を過ごすというものだ。
逆に翌日は茶色い目の人は優れ、青い目の人は劣っているとして生活する、というものだった。
実験の様子はABC放送の「目の色が巻き起こした嵐」と題した映像として残されている。エリオット先生のこの授業は差別される側の気持ちを実際に体験し、子どもたちの人種差別に対する考えを変えることができた。
そして、もう一つ重要なことが判明した。実験授業の2週間前と授業をしている2日間、そして授業の2週間後に国語と算数のテストを行った。子どもたちの点数は優れているとされているときに最高で、劣っているとされている時に最低を示した。
そして、授業後はクラス全体の成績がかなり高くなったという。
2日間の授業で大切なことを学び、その大切なことを学んだという意識が生徒たちに自信を与え、優れていると言われた時の高い得点を維持できるようになったのだった。
(以下略。全文はリンク先でお読みください。)
下線の部分、最初は優劣の差がなくても差別を先行させる事で優劣の差が生まれるなら、後から「これが優生思想が正しい証拠だ」といったふうに使われそうですね。
2006年にカナダの小学校でも同様の実験が行われました。
(『第34回日本賞受賞番組 ▽グランプリ“特別授業・差別を知る”カナダ・ある小学校の試み』より引用)
実験の初日、ルブラン先生は子供達に「134センチより背の低い子は優秀。そしてこれは科学的根拠に基づくものだ」と説明する。
その日は、背の低い子達が常に優遇され、背の高い子達は差別される。翌日は、立場が逆転。「背の高い子のほうが優秀だったことがわかった」として、子供達は全く逆の待遇を受ける。
こうして、子供達に「いわれのない差別を受けるとどんな気持ちになるのか」、身をもって体験させる。この実験の原型は、1960年代から英米で研究されてきた。アメリカの小学校教師がクラスを「青い目と茶色い目」にわけて、人種差別の理不尽さを伝えようとした授業が1988年にドキュメンタリーとして放送されている。
それをモデルとして、カナダの小学校が再びこの実験授業に取り組んだ。実験を通して、教師や子供の心情がどのように変化していったのかを授業中のやりとりや、インタビューで丁寧に描いている
(以下略。全文はリンク先でお読みください。)
この実験でも前半で差別された児童は、後半では平気で差別する側に回っています。(ただし実験の前半が終了した時点で、差別された児童にはタネ明かしがされています。なんでそういう事するかな?)
・喫煙者は非喫煙者に比べて自己管理能力が低い。
・女は男に比べて論理的に考えるのが苦手。(A)
・Aゆえ、女は政治家に向かない。
・Aゆえ、女は管理職に向かない。
・男の指導者は戦争をするが、女の指導者は戦争をしない。(B)
・Bゆえ、男は政治家に向かない。
・女は男に比べて数学が苦手。
・女は男に比べて車の運転や地図を読むのが苦手。
・男は女に比べて脳の一部が小さいため並列処理が苦手。
・大和民族は朝鮮民族や満州民族に比べて優れている。
・韓国人は火病を患っているから怒りをコントロールできない。
・アーリア人種の子孫はユダヤ民族に比べて優れている。
・白人は黒人に比べて優れている。
・部落出身者はそうでない人に比べて劣っている。
ではどんな人が差別をしやすいのか?
それはこんな人だ!
精神科医クリストフ・アンドレとフランソワ・ルロールの共著「自己評価の心理学」より引用。
【自己評価と人種差別】
心理学の実験で、被験者になってくれた人たちにわざと難しい仕事をさせて失敗させたり、自分の死のことを考えさせて自己評価を下げさせてやると、そうされた人々は他人の悪口を言うか、そうでなければ犯罪に厳しくなったり、自分の文化とはちがう文化からの攻勢に不寛容になる(11)。
たとえば、このような方法で自己評価を下げられたアメリカの市民たちは、自分の国の悪口を言う人間に対して厳しい判断を下す傾向にあった。また、別の実験を見ても、自己評価を下げられた人間は容易に人種差別的な偏見を口にするようになるという結果が報告されている。
もちろん、人種差別の原因は、自己評価が低いことばかりではないだろう。だが、自己評価が下がっている人間にほんの少しイデオロギーが手を貸してやれば、簡単に差別的な行為をするようになるはずである。
11.J.Greenberg et al.,<<Terror management and tolerance:does mortality salience always intensify negative reactions to others who threaten one's worldview?>>,Journal of Personality and sociar Psychology,1992,63,p.212-220
そうか・・・わかったぞ!ぶどうが捕れないせいで自己評価が低下したきつねの内集団バイアスに訴えかけて、「本当は君たちのほうが清く正しい優れた種なんだよ」とささやくんだ。科学風の証拠も捏造してあげよう。
そして「ぶどうを捕ったきつね達は君を不当に踏みにじる悪者なんだよ」と教えて恨みを煽ってやるんだ。一度騙せばウソが発覚しても認知的不協和が同調圧力を作動させるからずっとコントロールできるぞ!
もしも、誰かがあなたの心の中にある内集団バイアスに訴えてきたら、充分に注意してください。
みんな!オラにちっとつ元気を分けてくれ!Tweet
関連サイト
パラビオシス/差別意識について