論理的思考力と論理的な議論




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【論理的思考力と議論】

【上級者の実戦を観察する】

【心理と対話】

【その他】


私は、あなたがあなたの欲求を満足させる権利を尊重しますし、
同時に、私自身についてのその権利も尊重します。
だから、私たち双方に受け入れられる解決策を
いつも探すことにしましょう。
あなたの欲求は満たされ、私の欲求もまた満たされるでしょう。
どちらも負けません。両方が勝つのです。

-「人間関係についての信条」より-


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勝ち負けのない聞き方・話し方-サブメニュー


◆「対決の私メッセージ」で相手の行動を変える。

「対決のわたしメッセージ」は、相手の行動が原因で、自分が困った影響を受けており、相手に行動を変えてほしいときに使用します。

「対決のわたしメッセージ」は次の三部構成で成り立っています。
1.相手の行動内容。(事実のみを、非難がましくなく)。
     +
2.自分への具体的な影響。
     +
3.自分の気持ち。

(例. 『親業ケースブック〈成人編〉 』より。)
おばあちゃん。洗濯物を取りこんでたたむときに、個人別に重ねてないとあとでしまうときに手間がかかってわたしは困るんですけど。


この「対決のわたしメッセージ」は次の三部構成になっています。
1.おばあちゃん。洗濯物を取りこんでたたむときに、個人別に重ねてないと、(相手の行動内容)。
2.あとでしまうときに手間がかかって、(自分への影響)。 
3.わたしは困るんですけど。(自分の気持ち)。

もし、この欲求を「あなたメッセージ」で送ると次のようになります。
「おばあちゃん、洗濯物をたたむとき、個人別に仕分けてくれないと困ります。」
これでは、「自分への影響」が抜けているので、自分がどう困っているのかが相手に伝わりません。

★ポイント。
まず、相手へ伝えたいメッセージを紙に書いてみます。相手の行動を非難せずに描写し、それが自分にどんな影響を与えているか、そのために自分がどんな気持ちでいるかを記します。

★「わたしメッセージ」から「能動的な聞き方」に切り替える。
「わたしメッセージ」で欲求を伝えても、相手が反発してきたり、防御の姿勢に転じることがあります。そのときは、「能動的な聞き方」に切り替えて、相手の心を開きましょう。

次の事例は、マージャンで遅く帰ってくる夫への、妻の対応です。 (『親業ケースブック〈成人編〉 』より。)

 「ねえ、あなた。マージャンするの、土曜日だけにしてくれないかなぁ。普段の日だと、あなたが遅く帰ると私眠れないし、次の朝起きるのが苦痛だし・・・・・・。それに、カギをあけなければいけないし、本当に眠れなくて困るのよ。相手の行動+自分への影響+自分の気持ち)」
 「鈴木君が誘うんだよ。それに、カギなら僕も持っているから、勝手に開けるから、寝ててくれればいいのに。(防御)」
 「寝ててもいいのね。(繰り返し)」
 「うん、寝てればいいんだよ、勝手に起きていて、怒られるとたまんないよ。(防御)」
主人の口調は、少し怒っている様子になりました。
 「でも、あなたが遅いと心配なの。それに、睡眠不足で、次の日は身体がしんどいので、仕事がなんにもできなくなって、仕事がいっぱい残って困るのよ。行動+影響+気持ち)」
すると主人は、少し口調を和らげて答えました。
 「男の付き合いがあるから、断れないんだ。それに、マージャンは面白いよ。」(防御
 「あなた、マージャンが楽しいのね。(言いかえ)」
 「うん、昨夜はついていてね、僕がトップだったんだ。」
うれしそうな表情になって、主人は言いました。
 「良かったね。でも、マージャンするのは、やっぱり土曜日だけにしてほしいわ。土曜日だと次の日が休みで、私も遅くまで起きていられるから。あなたも疲れなくていいでしょう。」
 「そうだなぁ。いくら十一時までにしようと思っても、つい十二時くらいになってしまうもんなあ・・・・・・。おれも、もう若くはないから、疲れが残るようになったよ。」
 「疲れるようになったのね。(繰り返し)」
 「うん。土曜日だけにするよ。おまえにこれ以上、迷惑をかけられんし。」

最後のところは、主人は笑いながらの冗談が半分、テレが半分のような口調でしたが、これまでの会話が、いつも口論になってしまうのにくらべ、大成功だったと思います。もちろん、反省することもあります。私の気持ちを聞いてもらいたいと意識しすぎて、つい押し付け(土曜日だけにして)を強調していました。それでもうまくいったのは、マージャンが好きな主人の気持ちを、私が良く聞けたからではないかな、と思います。


この方は、『親業』を覚える以前の会話も報告してくれました。

 「ねえ、マージャンだけど、少しひかえてくれないかな。(あなたメッセージ)」
 「そんなこといっても、男には男の付き合いがあるんだ。(防御)」
 「とかいって、本当は自分が好きだからじゃないの? 全部が全部付き合いなんて、とても信じられないわ。(分析)」
 「なんだと!? お前は俺のいう事を信じないのか?(防御)」
 「だって、これだけいつもいつもでは、信じろというほうが無理よ。(批判)」
 「うるさい!(防御)」


このように、『親業』を覚える以前は、水掛け論になってしまいうまくいかなかったといいます。次の事例は、酒によって帰宅後、寝た子を起こす夫への、妻の対応です。(『親業ケースブック〈成人編〉 』より。)

 「おはよう、ねえ、ちょっとお話があるんですけど。」
 「なんだい?」
 「あなたがお酒を飲んで酔って帰ってくると、いつも必ず眠っている私たちを起こそうとするでしょ。行動) あれ、本当に困ってしまうの。(気持ち) 子ども達は起きてしまって、その子ども達を私がまた寝かしつけなければならないと思うと、(影響) イライラしてとても腹が立つ、と思ってしまうの。気持ち)」
 「うーん・・・・・・。でも、僕が帰ってきたとき、みんなの寝ている姿を見ると、つい起こしてみたくなるんだよ。(防御)」
 「眠っている子ども達が、起きてもいいと思っているのね。(繰り返し)」
 「そうじゃないけれど・・・・・・。ただ、起きて話を聞いてほしかったんだ。(防御)」
 「あら、そうなの。話を聞いてほしいのに、帰ってみると私も子ども達も眠っている。酔っているから、ついつい起こしてやろうという気持ちになるのね。(言いかえ+気持ちをくむ)」
 「うん、そうなんだ。これからはなるべく起こさないようにするよ。」
 「私が迷惑に思っているのはわかるし、迷惑をかけるのはいやだとあなたは考えてくれるのね。(言いかえ)」
 「そりゃ、もちろんそうだよ。迷惑はかけたくないよ。」
 「よかったわ。あなたが私のことを考えていてくれて本当にうれしいわ。じゃ、お願いしますね。(後述する「肯定のわたしメッセージ」)」

主人のやることで私がどれだけ困り、迷惑に思っているかを、まずはっきり言う。それから、主人がどんな気持ちであんなことをするのか聞く――『親業』の中の、話し方と聞き方を切り替えて使ってみました。その結果、朝のあわただしい時間でしたが、いちおう満足のいく結果になったと思います。

これまでだったら、翌朝はこんな会話、というより、言い合いになったものです。
 「あなた。夜遅く帰って、大声で起こすのは、もうやめてくださいね。(指示)」
 「そんなこといっても、せっかく帰ってきたのに、だれも話し相手がいないのは、味気なくて嫌なんだ。子ども達の顔だって見たいしさ。(防御)」
 「あなたはいいかもしれないけど、私は嫌よ。第一、みっともないわ。(侮辱) 子ども達だって嫌がっているし、尊敬されなくなるよ。(脅迫)」
 「帰ったら、黙って寝ろというのか。夫婦の会話が必要だといったのは、いったいどこの誰なんだ。それなのに、僕が帰ったときには眠っているじゃないか。(防御)」
 「それとこれは違うわよ。(論理) もっと早く帰ってくれれば、ゆっくり話せるわ。(提案)」
 「だって、仕事だから仕方ないじゃないか。(防御)」

お互いに言いたいだけ言って、結局は朝の忙しさの中で時間切れでした。自分にとって何が問題か、主人の問題が何かをきちんと分ければ、話がスムーズに行くものだと感じました。


次の事例は、中学生男子(十五歳)と父親との会話です。(『理由ある反抗―親業(ゴードン・メソッド) いまを解決する話す技術・聞く技術 』より。)

父親が帰宅して「ただいま」と言っても、息子からは「お帰りなさい」の声が聞こえない。「返事は?」「聞こえないぞ」という叱責も、あきらめの境地になりつつある日。
父親 (帰宅後、息子の部屋に行って) 「マサルが大きな声で「お帰りなさい」を言ってくれるとお父さん、疲れが吹っ飛ぶんだけどな。(自分の気持ち)」
息子 「・・・・・・。(反応なし)」
―ところが翌日―
息子 「(大きな声で)お帰りなさい!」
父親 「おっ、今日は大きな声で嬉しいな。(相手の行動+自分の気持ち)」
―それから数ヶ月―
父親 (受験が終わり、寝ころんでテレビばかり見ている息子に) 「寝転がってテレビを見ていると、目も悪くなるし、具合でも悪いんじゃないかと、お父さん心配になるぞ。(相手の行動+自分の気持ち)」
息子 「・・・・・・。」(しばらくすると、起き上がり、座椅子を持ってきて見る。)


この父親の「わたしメッセージ」は三部構成ではありませんが、対立が起きていない普段の会話なら、これでも効果があります。

同書からもう一つ事例を引用します。(『理由ある反抗―親業(ゴードン・メソッド) いまを解決する話す技術・聞く技術 』より。)

夕食後、食器を洗う母親の前に、息子が牛乳を飲んだコップを置いていく。しばらくしてまた牛乳を飲みにきて、食器棚から新しくコップを取ろうとする。
母親 「あなたが、また新しいコップを使うと、(行動) 洗って拭いて、片付ける仕事が一つ増えるの。(影響) さっきのコップを使ってくれると助かるわ。(気持ち)」
息子  「うん。」
<母親の一言>中学生になって、親とはろくに会話もしなかった息子が、あまりに素直な反応でしたので、たいへん驚きました。


次の事例では、子どもが自力で対策を考え出しています。(『子育ての新しい世界「親業」―今日からできる親業実例集 』より引用。)

財布をなくさないように自分で対策を立てた徹二
五歳、次男、徹二。夜、本屋へ行き、自分の財布を置き忘れてしまいました。幸い、今回すぐ気がついたのでなくならなかったのですが、以前買い物に行ったときは、落としたのに気づかずなくしてしまいました。このことがあるので、帰宅後主人から怒られ泣きそうになりました。

 「おまえはもう財布を持っていくな。どこでも置きっぱなしにして・・・・・・。また前みたいになくなったらどうするんだ!(命令+批判)」
息子 (黙って泣きそうになる)
 「そんな顔をしてもだめ!(命令)」
 「お父さんに怒られてつらかったね。<能動的な聞き方> でもお母さんも徹ちゃんがお財布をなくしたらお金もなくなるからいやだな<わたしメッセージ>
息子 「ふーん。どうして? ぼくだって財布を持っていきたいのに。(防御)」
 「徹ちゃんも自分でお金を持ってお買い物したいんだね。<能動的な聞き方> でも、いっぱいお金を持っていって落としたり忘れたりしたら、もうお買い物ができなくなるよ。それにお母さんだって徹二のお金がなくなったら、またお金をあげないといけないし、新しいお財布を買わなければいけないからいやだなあお母さんのお金も減るからつらいなあ<わたしメッセージ>
息子 「ふーん。(しばらく考えて)うん、うん、わかった。そしたら今度からはお母さんに預けておいて、百円か二百円、言ってからもらって買うよ。それならいいかな?」
 「いいよ。そしたら今度からそうしようね。」
息子 「うん。(機嫌よくお風呂に入りに行った)」

<感想>以前財布をなくしたときは私もカッとなって、今回の主人同様、頭ごなしに怒鳴ってしまいました。子どもはつらそうな顔をしてベソをかいていたのについ、立て続けに怒りました。今回、影響を明確にして、ゆっくり説明してやると泣くこともなく、すんなり受け入れてくれたのです。ただ気持ちだけを感情的に言っても子どもを萎縮させるだけだと実感しました。


この事例では、徹二君は自分の力で解決策を導き出しています。なぜなら、命令・指示である「あなたメッセージ」とは違い、「わたしメッセージ」には、相手が自分で考える余地が残されているからです。

自分の欲求を「あなたメッセージ」で送ると、「お前はもう財布を持っていくな」という命令、つまり結論に押し付けになって、そこに相手が考える余地はありません。相手には、それに従うか否かしか選択肢がありません。

一方、「わたしメッセージ」では、「お財布をなくしたらお金もなくなるからいやだな。」と、自分への困った影響を伝えるので、メッセージを受け取った相手は、「お母さんは、お金がなくなるといやなんだ」と解釈して、じゃあ自分は相手の欲求を満たすためにどういうふうに協力できるのだろう、と自分の頭で解決策を考えることができます。さらに、それが上手くいくと、自分の考えた方法で相手に貢献できたという喜びの感情が芽生えます。

「相手が悪い」と責める「あなたメッセージ」から、「自分は相手の行動を受容できない」と伝える「わたしメッセージ」へと発想を転換しましょう。


みんな!オラにちっとつ元気を分けてくれ!Tweet


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