論理的思考力と論理的な議論

【論理的思考力と議論】

【上級者の実戦を観察する】

【心理と対話】

【その他】


私は、あなたがあなたの欲求を満足させる権利を尊重しますし、
同時に、私自身についてのその権利も尊重します。
だから、私たち双方に受け入れられる解決策を
いつも探すことにしましょう。
あなたの欲求は満たされ、私の欲求もまた満たされるでしょう。
どちらも負けません。両方が勝つのです。

-「人間関係についての信条」より-


トマス・ゴードン博士の親業訓練講座(P,E,T,)
勝ち負けのない聞き方・話し方-サブメニュー


◆「勝負なし法」(第三法)で対立を解消する。

「対決のわたしメッセージ」を送っても対立が解決しないことがあります。そんなときは、「勝負なし法」(第三法とも呼ぶ)という議論の方法を使うことができます。その説明の前に、欲求が対立したときの三つの対処法について考えてみましょう。

・第一法―自分が勝ち、相手が負ける。
これは、「権力」で押し切るタイプです。自分の欲求は満たされるが、相手の欲求は無視されます。第一法には前項で説明したような副作用があります。

・第二法―相手が勝ち、自分が負ける。
これは、「予防のわたしメッセージ」の項で説明した<ひっこみ型>の人に多いタイプです。これを続けると、前項で説明した「服従する型」の人のように、溜まった不満が爆発して「闘う型」に転ずる可能性があります。「第一法」と「第二法」を合わせて、「勝負あり法」と呼びます。

・第三法―自分も勝ち、相手も勝つ。
これが本項で解説する「勝負なし法」です。「勝負なし法」は全員の欲求を同時に満たせる、勝ち負けのない民主的な方法です。それゆえ、権力の副作用もありません。これから「勝負なし法」のやり方について説明します。参加人数に制限はありません。

【準備段階】
 ・話し合いたいことがあることを「わたしメッセージ」で率直に伝える。
 ・時間があることを確認する。
 ・メモなどを用意して、記録できるようにする。
 ・勝負なし法のやり方を相手が知らない場合は説明する。

【第一段階】―問題点をハッキリさせる。
「対決のわたしメッセージ」で自分の欲求を伝えたあと、「能動的な聞き方」で相手の欲求を聞き取ります。このとき重要な点は、「手段」ではなく「目的」を問題点に設定することです。例えば、「11時にホテルの会合に行くために車を使いたい。」という欲求がある場合、次の二つのうち、後の方が問題点の設定として正しいものです。

× 「私が車を使いたい。」<手段
 「11時にホテルの会合に行きたい。」<目的

「手段」が問題点に設定されてしまうと、非常に狭い範囲の議論しかできなくなり、結局、「私が車を使うか、あなたが車を使うか」の勝負あり法になる恐れがあります。しかし、「目的」を問題点に設定すれば、「電車を使う」とか「相乗りする」などの様々な解決策を導くことができます。

【第二段階】―解決策を出す。
この段階では、全員の欲求(目的)を同時に達成できるアイディア、もしくは、妥協案を思いつく限り挙げていきましょう。ルールは以下の四つです。
 
 ・思いついたアイディアをどんどん発言する。
 ・人の発言に対して批判したり、ほめたり、説明を求めたりしない。人は、「他人から評価された」と感じると自発的に発言しなくなるためです。
 ・頭をやわらかくして「ありえない」と思うアイディアでも言ってみる。
 ・すべての発言をホワイトボード(や黒板)か紙に書く。

【第三段階】―解決策を評価、検討する。
第二段階で出たアイディアを一つずつ検討します。当事者の一人でも受け入れられないアイディアは取り除いて、全員が受け入れられるアイディアだけを残します。○×をつけていくと分かりやすいでしょう。アイディアを評価していくうちに、新たなアイディアが出ることがあります。そのときは、それを書き加えて評価検討しましょう。

この段階でアイディアが残らなかった場合は、第二段階もしくは、第一段階に戻って再検討しましょう。

【第四段階】―お互いが受け入れられる解決策を決定する。
第三段階で残ったアイディアの中から、全員の納得のいく解決策を決定します。このとき、他の人に圧力をかけてはいけません。また、多数決で決めてもいけません。多数決は多数派が勝つ「勝負あり法」です。敗者は決まったことを積極的に実行しようとは思いません

全員の合意を確かめるために、参加人数が多い場合は、契約書を作って、署名させましょう。署名捺印をためらう人がいれば、全員一致ではないことがわかります。このとき、たとえ一人でも集団の圧力に降参させてはなりません。

この段階で解決策が決まらなかった場合は、第二段階もしくは、第一段階に戻って再検討しましょう。

【第五段階】―決定を実行する。
決定したことを実行するために必要な事柄を決めます。誰が、何を、どのように、いつまでにやるのか、具体的に決めて、忘れないように全員がメモを取りましょう

【第六段階】―実行した結果を見直す。
解決策が実行されたあと、その結果が良かったかどうかを検討します。当事者が決められたルールを守らない場合は、「対決のわたしメッセージ」を送って問題が起きていることを伝えましょう。その結果、解決策そのものに問題がある事がわかったときは、もう一度「勝負なし法」で話し合いましょう。

では事例を見てみましょう。 (『人間関係を育てるものの言い方 』より。)

【第一段階】―問題点をハッキリさせる。
子どもが気管支炎を起こしたので、タバコがいけないと医師に言われた。同居している実父にとって、タバコは大きな楽しみなので、やめることはできない。

【第二段階】―解決策を出す。
(1)タバコをやめる。
(2)子どもが別の部屋で寝た時、戸を閉めてタバコを吸う。
(3)気管支炎が治るまで、父は親戚に泊まる。
(4)本数を減らす。
(5)父が別の部屋に行ってタバコを吸う。
(6)外出を多くして顔を合わせる時間を少なくする。
(7)タバコの代わりにアメをしゃぶる。

【第三段階】―解決策を評価、検討する。
(1)やはりタバコをやめることはできない。
(3)の親戚に泊まりに行くのは大変だ。
(6)の外出を多くすることも大変。

【第四段階】―お互いが受け入れられる解決策を決定する。
(2)子どもが別の部屋で寝た時にタバコを吸う。
(4)本数を減らす。
(5)父が別の部屋に行ってタバコを吸う。

【第五段階】―決定を実行する。
父も気を遣って本数を少なめにしている。子どもが寝た時はもちろん、起きている時でも、時々は別の部屋に寝かせて戸を閉めた。

【第六段階】―実行した結果を見直す。
解決策を互いに出したために、気まずい思いをせずに協力的な感じで、実行することができた。子どもの気管支炎も良くなった。


「勝負なし法」は、言葉が通じない赤ちゃんにも使えます。(『自立心を育てるしつけ―親業・ゴードン博士 』より。)

【第一段階】―問題点をハッキリさせる。
私の赤ちゃんは、ベビーサークルの中で泣きわめいていました。小割板をがたがたさせて騒ぎ、まるで飛び出そうとしているようでした。私は赤ちゃんを、ベビーサークルから出したくありませんでした。友達が来るので、その前に家を掃除しなければならなかったからです。

【第二段階】―解決策を出す。
私は第三法でいこうと思い、他の解決案を考え始めました。まず、ミルクが半分はいった哺乳瓶を彼に与えました。

【第三段階】―解決策を評価、検討する。
しかし彼は、哺乳瓶を放り投げて、ますます大声で泣きわめきました。

【第二段階へ戻る】
そこで私は、ベビーサークルの中にガラガラを置いてみました。

【再び第三段階】
でも彼は、ガラガラに見向きもしないで、泣き叫び続けました。ベビーサークルの側板をガタガタいわせました。

【第二段階へ戻る】
そこで私は、買って包装紙にくるまれたままの、色つきの小物のことを思い出しました。洋服ダンスからそれを取り出し、リボンをかけた箱ごと、彼に手渡しました。

【第四段階】―お互いが受け入れられる解決策を決定する。
すると突然、彼は泣き止んで、その箱で遊び始めました。リボンを外そうとしながら。

【第五段階】―決定を実行する。
三〇分ほど、彼はそれに熱中していました。その間に私は、家事ができました。

【第六段階】―実行した結果を見直す。
彼がどうしているかと、部屋へ戻ってみましたが、彼はその小物に夢中になっていました。

<博士の解説> 子どもが小さいうちに、より容易な問題から始める。そうすることによって、子どもが成長して問題がややこしくなっても、うまく対応できるだろう。
さらに利点がある。子どもが一〇代に成長した時に、よくある例に比べて、子どもとの対立が少なく―はるかに少なく―なるだろう。


★参加の原理
「勝負なし法」がうまくいく理由の一つに「参加の原理」があります。「参加の原理」とは、自分が参加した事柄に関しては肯定的な判断を下したり、なんとかうまくいかせようと努力する心理学の原理をいいます。

ある小学校では、児童の野菜嫌いを克服するために、児童自らが野菜を栽培して調理する方法を試しました。その結果、児童は見事に野菜嫌いを克服できたのです。これも参加の原理の力です。そして「勝負なし法」は参加の原理を大いに取り入れています。

★「勝負なし法」は学校における問題解決に応用できる。
学校内で問題が起きたときの新しいルール作りにも「勝負なし法」が使えます。「勝負なし法」を使う事により、生徒には自分自身の力で問題を解決する能力が身につきます。

例えば、「生徒の捨てたガムが、そこらじゅうに貼り付いている。」という問題が起きたとします。このとき、第一法だと、教師の権限で「ガム禁止令」を出すことはできまが、生徒の「ガムを噛みたい」という欲求は否定されますし、権力の副作用が発生する可能性もあります。

一方、「勝負なし法」を使うと、生徒には、自分の頭で解決法を考える機会が与えられます。生徒は、自分達を犠牲にせずに、他人にも迷惑をかけない解決策を導くでしょう。例えば、「ガムはきちんとゴミ箱に捨てる」などがありますね。

なぜ教師がそこまでしなければいけないのか、と感じるかもしれませんが、考えてみてください。
1.企業はどんな人材を求めますか? 指示されたことしかできない人材か、それとも、問題発生時に自律思考ができて、物事に優先順位をつけながら解決策を導ける人材か。もちろん後者です。
2.民主主義国家にはどんな国民が必要ですか? 決まりごとに従順なだけの国民、あるいは「闘う型」で対抗しようとする国民か、それとも、政策についてよく議論して投票権を行使する国民か。こちらもやはり後者のはずです。

もしあなたが教師であり、勝負なし法を導入したくても組織の決まりでできないのであれば、まずは決定権者に「勝負なし法」をプレゼンしてみて、教室で使用する許可を求めてみるのはいかがでしょうか。

・「虐め」も第一法の対処法。
児童や生徒間で人間関係のトラブルが起きたときに、コミニュケーションスキルの低い子どもは、報復措置としての虐めを選択することがあります。しかし、子ども達が『親業』の対処法に日常から接していれば、「わたしメッセージ」や「勝負なし法」で対立を解消するでしょう。

人はふつう、他人の見つけた理由よりも、自分で見つけた理由で納得する。
-B.パスカル-


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