論理的思考力と論理的な議論




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【論理的思考力と議論】

【上級者の実戦を観察する】

【心理と対話】

【その他】



第3章 詭弁!誤謬!レトリック!―サブメニュー

【推論形式の誤謬】

【前提の誤謬】

【レトリック】(暗示にかける表現)


女性の社会進出が進んだら少子化も進んだ!男女平等が悪い!【擬似相関】

今日は
・擬似相関 (ぎじそうかん)
・前後即因果の誤謬 (ぜんごそくいんがのごびゅう)
これをやるぜ!

まずは今日使う言葉を定義しよう。

因果関係と相関関係

因果関係とは原因結果の関係ことです。例 「太陽がのぼったから明るくなった」、「地震が起きたから津波が起きた」など。言い方を変えると、一方の変化によってもう一方の変化を引き起こす関係のことです。


相関関係とは、データ上で二つの出来事の一方が増減するのと同時にもう一方も増減するような現象のことです。

抽象的な例
・Aの増加と同時にBも増加した
・Aの減少と同時にBも減少した
・Aの増加と同時にBが減少した
・Aの減少と同時にBが増加した

これらは相関関係です。

具体的な例
・二酸化炭素排出量の増加と同時期に地球の気温が上昇した
・婚姻数の減少と同時期に出産数が減少した
・警察官の増加と同時期に犯罪が減少した
・気温の低下と同時期に暖房器具の売上が増加した

グラフの例こちらのブログから引用させて頂きました)



世帯収入が多いほど正答率も高いという統計データがあります。これも相関関係です。以上が今日の定義です。



擬似相関

データの相関関係だけでは原因と結果の仕組みが分かりません。なので相関関係があっても因果関係があるとは限りません。ところが相関関係だけを見て因果関係があると思ってしまったり、原因と結果を逆に考えてしまう事があります。


【因果関係が逆転している例】

「犯罪が多い国は刑務所が多い、だから刑務所を減らせば犯罪が減る」

犯罪が多いのは原因、刑務所が増えたのは結果なので、刑務所を減らしても犯罪は減りません。

「調査によると認知症患者は同年齢の認知症でない人よりも歯の本数が少ない。おそらく噛む機会が減ったことで脳への刺激が少なくなり、その結果として認知症を引き起こすのだろう」

疑ってみよう。
答え(そうとは限りません。認知症になった結果として、歯を磨かなくなり虫歯が増えた可能性もあります。


【上流に共通の原因がある例】

共通の原因AがBとCを同時に引き起こしたのを見て、BとCの間に因果関係があると錯覚するケース。

 A  ←共通の原因
 ┃
┏┷┓
┃ ┃
B C ←この二つの間には因果関係がない

「アイスクリームの売り上げが増える時期は水難事故も増える。よってアイスクリームの販売を規制すれば水難事故が減る」

これには上流に共通の原因「夏になって気温が上昇した」があります。気温が上がればアイスクリームの売り上げも増えるし、海で遊ぶ人も増えるので水難事故も増えます。だからアイスを規制しても水難事故は減りません。

「調査によると背の高い小学生ほど知能も高い傾向にある。よって身長の高さと知能の高さには因果関係がある」

疑ってみよう。
答え(本当の理由は一年生よりも六年生の方が身長・知能ともに高いからです。共通の原因は「年齢」であり、身長と知能に因果関係があるとは言えません。


「朝ごはんを食べる小学生は成績が良い。だから朝ごはんを食べると成績が良くなる」

これも正しいとは限りません。因果関係がある場合とない場合、両方の可能性が考えられます。

因果関係があると仮定した仮説→空腹で集中力が低下するのを予防できるから勉強がはかどって成績が良くなる可能性がある。

擬似相関であると仮定した仮説→朝ごはんを食べさせる親は勉強の面倒も見る傾向があるから成績が良くなる可能性がある。

「調査によると食事の栄養バランスの悪い子どもほどキレやすいことが分かった。よって栄養バランスの改善がキレにくい子どもを育てるコツだと言えよう」

疑ってみよう。
仮説の例 (食事の栄養に無関心な親は、子供の精神面に教育にも無関心であるためキレやすい性格になるのかもしれません。ですがこの発言では栄養が原因でキレやすくなったと決めつけています。






先ほどのこのグラフにも擬似相関の可能性があります。仮説を立ててみましょう、以下は私なりの仮説です。

擬似相関であると仮定した仮説→収入の高い親ほど教育意識も高く、子供に勉強をさせる傾向がある可能性がある。または収入の高い親ほど本をよく読む習慣があり、子供も親の真似をして本をよく読むようになり、結果として学力が上がる可能性がある。

因果関係があると仮定した仮説→高い学費を払って私立校や塾に通わせた結果として学力が上がった可能性がある。


【全くの偶然の一致である例】

たまたま同時に起きただけでもデータ上では相関関係ができるので、因果関係があると錯覚することがあります。

「ある長寿国では梅干しがよく食べられている。よって梅干しが長寿の秘訣であると思われる」

ヨーグルト長寿説もある。


次は本当にあった例です。

「北欧人の一人当たりの牛乳の消費量は日本人の3倍である。しかし骨折率は日本人の6倍である。したがって牛乳を飲むと骨がもろくなると言える」

俺がGoogle先生に依頼した調査によると、この主張には色々と想定していない事があることが判明しました。

・この主張における骨折とは「大腿骨けい部骨折」のみを指している。背骨の骨折率は日本人のほうが高い。

・北欧人に大腿骨けい部の骨折が多いのは、足が長く体が大きい事が影響している可能性がある。

・北欧は寒いので道が凍って転倒しやすい環境要因がある可能性がある。

・北欧は日照時間が短いので、カルシウムの吸着に必要なビタミンDが不足する可能性がある。

・骨の強度を知りたいなら骨密度そのものを調べたほうが確かである。

以上の理由からこの主張は擬似相関の疑いが濃いのではないかと思われます。


もう思いつかないからWikipedia先生から盗用引用しよう・・・。 

「体罰が盛んだった時代には少年犯罪が多発していた。それゆえ、体罰を復活させれば少年犯罪は増加するだろう」

ほんとかなー?

ちなみに相手の説が擬似相関である可能性を指摘しても因果関係の存在を否定したことにはなりません。因果関係の存在が立証されていない事への指摘に過ぎません。



前後即因果の誤謬

Aが起きてからBが起きたという事実を見て、AがBの原因であると早とちりする事があります。

つまり先後関係と因果関係を取り違えるわけです。先後関係とはAが起きた後にBが観測される関係のこと。因果関係とはAが起きたことが原因となりBが起きる関係のことです。

「ネットで中傷された後に自殺した。ゆえに、ネットの中傷が自殺の原因」

別の原因の可能性を無意識的に排除しています。

「食品Aを摂取した後から物覚えが悪くなった。食品Aが原因に違いない」

歳のせいかもね。

「祈ったら病気から回復した。祈ったおかげだ」

自然治癒かもね。

「女性が参政権を持つまでは核兵器は無かった。核廃絶したいなら女性から参政権を取り上げたほうが良い」

(:. ゚ ж゚.):;'.:`:ブッ

・似たものに「Aと一緒だったからAが原因」というパターンもあります。

「亡くなった祖母から譲り受けたお守りを身につけて大学受験に挑んだら見事合格することができました。僕が合格できたのは間違いなくこのお守りのおかげです!それが今ならなんとたったの100万円!!絶対お得だね!!」

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・因果関係を逆転させて主張するケースもあります

「車いすは危険である。なぜなら、車いすに乗っている人は事故に遭ったことがあるからだ」

車いすは結果であって原因ではありません。

「バスケットボールの選手は身長が高い。よってバスケットボールをすると背が伸びる」

元から長身の選手しかチームに残れなかった可能性もあります。



対照実験

データ上の相関関係に因果関係が存在するかどうかを調べるために対照実験という方法があります。あんまり詳しくないから辞書を引こう。

Goo辞書 【対照実験】

ある条件の効果を調べるために、他の条件は全く同じにして、その条件のみを除いて行う実験。除いたときと除かないときの結果を比較する。医療や統計学では対照試験ともいう。コントロール実験。空 (くう) 試験。ブランクテスト。


Weblio辞書 【対照実験】

一つの対象に対するある条件の影響を明らかにしようとする実験(本実験)を行う際,目的とする条件以外は本実験と同じ条件で行う実験。両実験結果を比較検討することにより,その条件の影響が明らかになる。

なるほどわからん。

要するに例えば、薬品Aの効果を検証するさいは、薬品Aを投与する被験者のグループと偽薬を投与する被験者のグループに分けて、薬以外の生活環境等の条件はすべて同じにして実験する。

それで薬品Aを投与したグループにだけ効果が出れば、薬以外の条件は同じなわけですから、薬と結果に因果関係があるというわけです。なお偽薬を投与するのはプラシーボ効果の影響を排除するためです。


最後にアレいっとくか

ある食べ物が身体にいいという話はよく聞きますが、アメリカの調査結果によれば、パンは危険な食べ物だということがわかりました。 パン食が増えている日本も他人事ではありません! その驚愕の事実をご紹介します。

1)犯罪者の98%はパンを食べている

2)パンを日常的に食べて育った子供の約半数は、テストが平均点以下である

3)暴力的犯罪の90%は、パンを食べてから24時間以内に起きている

4)パンは中毒症状を引き起こす。被験者に最初はパンと水を与え、後に水だけを 与える実験をすると、2日もしないうちにパンを異常にほしがる

5)新生児にパンを与えると、のどをつまらせて苦しがる

6)18世紀、どの家も各自でパンを焼いていた頃、平均寿命は50歳だった

7)パンを食べるアメリカ人のほとんどは、重大な科学的事実と無意味な統計の区別がつかない



【まとめ】

みんな!オラにちっとつ元気を分けてくれ!Tweet

関連サイト(擬似相関)
NHK高校講座 ロンリのちから 第14回 因果関係(動画)
詭弁術の考察―関連性をこじつける
擬似相関 - Wikipedia
相関関係と因果関係 - Wikipedia
時間の無駄 相関関係と因果関係
統計のお話 第4回「相関と因果」 - 板倉雄一郎事務所
朝食の重要性と擬似相関 朝ごはんを食べないと成績が悪くなる?
凶悪少年事件の原因はジャンク・ファストフード…に釣られる人々
今さら人に聞けない「相関関係」と「因果関係」の違い
それって本当に直接関係ある?――擬似相関|カイゼン!思考力

関連サイト(前後即因果の誤謬)
詭弁術の考察―原因の誤謬
前後即因果の誤謬 - Wikipedia
先後関係と因果関係 - Wikipedia
回帰の誤謬 - Wikipedia

関連サイト(対照実験)
「対照実験」のやさしい例
中学の理科で習った、対照実験 ぶろぐ的さいえんす?
対照実験とは -比べると言うこと-|はし3の独り言
highplusの雑記, 対照実験と二重盲検法
SilverboyClub>対照実験
対照実験 - Wikipedia

関連サイト(プラシーボ効果)
プラシーボ効果とは (プラシーボコウカとは) [単語記事] - ニコニコ大百科
プラシーボ効果についての10のクレイジーな事実 カラパイア



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【推論形式の誤謬】

【前提の誤謬】

【レトリック】(暗示にかける表現)



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